A5判/208ページ/本体2100円+税/3刷
2015年4月/ISBN 978-4-86187-124-5
※第2954回 日本図書館協会選定図書
平和をつくることは簡単ではない。時間もかかる。
他者の存在を感じ、歴史の記憶から学び、そこから見えた問題を粘り強く考え、解決を目指していくことでしか、平和は得られない。
私たちはまず、そうした力が弱まっていることを自覚するところからしか平和をつくることはできないと考えている。
そうした力を取り戻すことは簡単ではないだろう。
だからこそいま、
非暴力の徹底、
構造的暴力/文化的暴力を問う、
社会的弱者/当事者からの問題の解決を考える、
歴史の重要性
という4つがますます重要になっている。
本書が、そのことに少しでも共感する人たち、とりわけ若い人たちにとって、平和へのガイドブックになれば幸いである。
堀 芳枝
高橋清貴
はじめに
第1章 私たちがなにをどう食べるかの選択が平和をつくる
インドネシアにおけるエビ養殖の事例から
間瀬朋子
1 様変わりするエビ養殖事情、進むグローバル化
2 エビを「つくる」人びとのエビ食と私たちのエビ食
3 エビ養殖池で働く人たち
4 エビ加工工場で働く人たち
5 エビをめぐる構造的暴力の克服と積極的平和の実現
第2章 低価格の洋服と平和
バングラデシュの縫製工場で働く女性たち
長田華子
1 低価格の洋服を身にまとう私たち
2 私たちが購入する洋服はどこで生産されているのか
3 低価格の洋服を誰がどのように作っているのか
4 低価格の洋服が生み出されるワケ
5 低価格の洋服を追求した結果の悲劇
6 バングラデシュの女性と私たち
第3章 モノから考えるグローバル経済と私たちがつくる平和
フィリピンのモノカルチャー経済からフェアトレードまで
堀 芳枝
1 私たちとアジアの平和ではない関係
2 豊かな国と貧しい国のモノの交換――帝国主義と植民地
3 途上国でモノをつくって先進国に売る――新国際分業の成立
4 私たちがつくるグローバル経済――フェアトレードと民衆交易
第4章 日本と韓国の真の協力関係を考える
李 泳采
1 日韓国交正常化50年と日韓関係の再検証の意義
2 第一次日韓交渉と歴史認識の相違(1950年代)
3 日韓会談と「未完の国交正常化体制」(1960年代)
4 日韓安保経済協力と「反日」市民行動の台頭(1970~80年代)
5 脱冷戦時代の日韓関係の変化と揺れる65年体制
6 真の日韓協力関係の構築のために
第5章 平和をつくるために考えてほしい三つのこと
高橋清貴
1 「平和」の定義
2 残忍性のエコロジー
3 「対テロ戦争」の実態
4 なぜ介入するのか?――「安全」と「正義」
第6章 アフリカにおける草の根国際協力とは
コトから考え、行動するために
勝俣 誠
1 言葉の意味を何回も問い直そう
2 アフリカとの偶然の出会い
3 アフリカとの草の根協力
4 アフリカとの草の根協力において大切な2つのコト
5 世界の文脈と地域のしがらみを読もう
第7章 バングラデシュにおけるNGOの活動変遷
援助から社会変革へ
日下部尚徳
1 NGOから考える国際協力
2 バングラデシュの現地NGOの活動変容
3 日本のNGOによるバングラデシュ支援――シャプラニールを事例に
4 NGOと私たち
第8章 アジア人、地球人として平和をつくる
ピースボートの活動から
川崎 哲
1 ナショナリズムをこえて
2 国境を越えて学ぶ
3 紛争予防のメカニズムをつくる
4 憲法9条を世界のものにする
5 原発事故を教訓として
第9章 産むか・産まないか
からだと健康をめぐる女性の運動
大橋由香子
1 もし予想外の妊娠をしたら……
2 産めよ殖やせよ、国のため
3 人口の「質」も管理した優生保護法
4 世界規模での人口管理政策
5 リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは何か
6 「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」をめぐる現状と課題
第10章 里山の遺産を活かしたコミュニティの可能性
持続可能な地域づくりの観点から
松村正治
1 山へ柴刈りに
2 高度経済成長期の燃料革命
3 持続可能な里山バイオマスの循環利用
4 生物多様性を保全するうえで重要な里山
5 将来を構想するための里山というモデル
6 現代における里山ビジネスの可能性
7 都市住民が里山保全に関わる意味
8 里山と関わる持続可能なコミュニティづくり
――身近な自然を私たちの手に
あとがき
間瀬朋子(ませ・ともこ)
1970年生まれ。南山大学外国語学部アジア学科准教授。主著=『現代インドネシアを知るための60章』(共編著、明石書店、2013年)、『消費するインドネシア』(共著、慶應義塾大学出版会、2013年)。
長田華子(ながた・はなこ)
1982年生まれ。茨城大学人文学部准教授。主著=『バングラデシュの工業化とジェンダー――日系縫製企業の国際移転』(御茶の水書房、2014年)。主論文=「グローバル金融危機以降の日系多国籍縫製企業による技術移転のジェンダー分析:日本―中国―バングラデシュの事例から」(『ジェンダー研究』第14号、2011年)。
堀 芳枝(ほり・よしえ)
1968年生まれ。獨協大学外国語学部交流文化学科教授。主著=『学生のためのピース・ノート』(共編、御茶の水書房、2013年)、『アジアの市民社会とNGO』(共著、晃洋書房、2014年)。
李 泳采(イ・ヨンチェ)
1971年生まれ。恵泉女学園大学人間社会学部准教授。主著=『韓流が伝える現代韓国――『初恋』からノ・ムヒョンの死まで』(梨の木舎、2010年)、『「アイリス」でわかる朝鮮半島の危機』(共著、朝日新聞出版、2010年)。
高橋清貴(たかはし・きよたか)
1960年生まれ。恵泉女学園大学人間社会学部教授。主著=『NGOから見た世界銀行:市民社会と国際機構のはざま』(共著、ミネルヴァ書房、2013年)、『おカネで世界を変える30の方法』(共著、合同出版、2008年)。
勝俣 誠(かつまた・まこと)
1946年生まれ。元明治学院大学国際学部教授・国際平和研究所所長。主著=『アフリカは本当に貧しいのか』(朝日選書(デジタルパブリッシングサービス 発売、オンデマンド版)1993年)、『脱成長の道――分かち合いの社会を創る』(共編著、コモンズ、2011年)。
日下部尚徳(くさかべ・なおのり)
1980年生まれ。大妻女子大学文学部専任講師。主著=『世界の社会福祉年鑑2011:社会福祉と貧困・格差』(共著、旬報社、2011年)、『現場〈フィールド〉からの平和構築論』(共著、勁草書房、2013年)。
川崎 哲(かわさき・あきら)
1968年生まれ。ピースボート共同代表。主著=『核兵器を禁止する』(岩波ブックレット、2014年)、『核拡散――軍縮の風は起こせるか』(岩波新書、2003年)。
大橋由香子(おおはし・ゆかこ)
1959年生まれ。ライター・編集者、大学非常勤講師。主著=『満心愛の人 益富鶯子と古謝トヨ子――フィリピン引き揚げ孤児と育ての親』(インパクト出版会、2013年)、『福島原発事故と女たち――出会いをつなぐ』(共編著、梨の木舎、2012年)。
松村正治(まつむら・まさはる)
1969年生まれ。恵泉女学園大学人間社会学部特任准教授。主著=『なぜ環境保全はうまくいかないのか』(共著、新泉社、2013年)、『みどりの市民参加――森と社会の未来をひらく』(共著、日本林業調査会、2010年)。
書評オープン 『ふぇみん』(2015年8月5日) 「ガバナンス」(15年6月号)、「ふぇみん」(15年8/5号)などで紹介されました。
「平和研究・平和学を学ぶ大学生向けのテキストとして書かれた同前書の全面改定版。冒頭部分は、日常私たちがどこでも口にするエビや若者なら知っているであろうファストファッションを題材に、アジアの人々と日本の私たちとお関係について書かれている。
非暴力、平和の構築のための具体的活動に関しては、戦後の日韓関係の再検証と現在の取り組み、シャプラニールなどをはじめとする地道で険しい海外NGOの活動から学びを深めることができる。
(中略)
平和構築、国際協力の題材は、日常のありふれた場にあり、すべてがつながっている、ポイントとされるのは、非暴力、構造的暴力、他者の視点、歴史の4点だ。興味のある賞を入り口にできるので、ぜひ手にとってほしい。」