有機農業・自然農法の技術――農業生物学者からの提言[3刷]

明峯哲夫
A5判/152ページ/本体1800円+税/3刷
2015年2月/ISBN 978-4-86187-121-4

化学肥料はもちろん、堆肥にも頼らない持続的農業のあり方を現場と理論から追求。
一貫して自給と農業生物学にこだわり、急逝した在野の研究者の渾身の作品!

目次

序 章 有機農業、自然農法、そして「ただの農業」へ
解説                           中島紀一

第1章 植物成長の原理――植物が植物を育てる
解説                          三浦和彦
1 農業の歴史――持続的農耕の4つのタイプ
2 遷  移
3 植物体(植物群落)の成長の仕組み――物質生産と物質循環
4 進化論からみた植物の光合成と微生物の窒素固定
5 窒素固定と光合成の共役
6 有機炭素の意義
7 農業の原理

第2章 低投入・持続型農業の作物栽培論
解説                          中島紀一
1 省エネルギー農業への回帰
2 省力農業の展開へ――なるべく手間をかけない
3 畑作農業の特質
4 輪作の仕組みと意義
5 作型の選択
6 水田農業
7 有畜農業

第3章 植物の環境への適応
解説                          中島紀一
1 植物は「不動」の存在か?――止まりつつ動く植物の二面性
2 農耕の二面性
3 植物の受粉(受精)の様式
4 自殖と他殖の違い――生殖の二面性
5 自然交雑・自家採種による系統育成
6 植物の生存戦略――脱出・資源探索・遺伝的多様性・適応
7 連作ということ
8 植物の環境適応――もうひとつの力

第4章 希望の地としての北海道
解説                          三浦和彦
1 私と北海道
2 北海道は日本か
3 北海道の開拓と農業
4 北方稲作――極早生種という技術開拓
5 畑作――輪作と有畜という課題
6 デンマーク農法――小規模有畜複合の可能性
7 少年の希望としての北海道
8 北海道「再開拓」の時代――北海道文化の再創造

第5章 農業生物学を志して
1 幻想としての「農業生物学」
2 わが「農業生物学」――ひとりの生活者、そして科学者として
3 生産と暮らしの一体化・「耕す市民」――技術を人びとの手に
4 振り返って 
解説                          三浦和彦

鼎 談 ぼくたちの時代、ぼくたちの歩み
明峯哲夫・三浦和彦・中島紀一

 

著者プロフィール

明峯哲夫(あけみね・てつお)

1946年、埼玉県生まれ。北海道大学農学部卒業、同大学院農学研究科博士課程中途退学。
専攻は農業生物学(植物生理学)。
1970年代初頭から「たまごの会」「やぼ耕作団」など都市住民による自給農場運動に参加しながら、人間と自然、人間と生物との関係、農の本源性、暮らしのあり方などについて論究を重ねてきた。また、農業生物学研究室を主宰し、NPO法人有機農業技術会議の代表理事を務めるなど、多くの仲間と共に有機農業技術の理論化・体系化の作業に取り組んだ。2014年9月15日逝去。

●主著=『やぼ耕作団』(風濤社、1985年)、『ぼく達は、なぜ街で耕すか』(風濤社、1990年)、『都市の再生と農の力』(学陽書房、1992年)、『街人たちの楽農宣言』(共編著、コモンズ、1996年)、『有機農業の技術と考え方』(共著、コモンズ、2010年)、『原発事故と農の復興』(共著、コモンズ、2013年)など。

 

書評

書評オープン


 「農の技」についての鋭い論客の著者・明峯哲夫さんが2014年9月に急逝された。本書は明峯さんの渾身の遺言である。
逝去の少し前に、最後の課題として定めた「農業生物学視点からの有機農業・自然農法の技術原理の解明」が本書で見事に果たされている。論旨の基本は有機農業も自然農法も特殊農法ではなく、農の本道の回復を志すもので、だからその技術原理は、農の技そのものの原理解明でなければならないという点にある。(中略)
植物が主導し、微生物がそれを補完するという地上の生物世界の現在がつくり出されていく。著者はここに農の営みの基盤があるとする。
そして併せて、「動かない植物」だからこそ獲得していった「環境適応能力」が生き物世界に多様性をつくり出していく。著者はここに農の展開の起動力を見いだしていく。
農とともに生きる在野の知性の展開と結実の見事な姿が、本書には実に明快に分かりやすく示されている。
  <評者:中島紀一(茨城大学名誉教授)、「日本農業新聞」(15年5月10日)書評より抜粋>


「日本農業新聞」(15年5月10日)、「現代化学」(15年5月号)、「有機農業研究」(Vol.8 No.1 2016)・(Vol.6 No.2 2014)、メールマガジン「電子耕」(16年12月20日)などで紹介されました。