有機農業で世界が養える

足立恭一郎
A5判/92ページ/本体1200円+税
2009年7月/ISBN 978-4861870606

有機農業は生産性においても優れていた!53カ国、293のデータを分析した結果、有機農業の単収(単位面積あたり収量)は途上国では慣行農業(農薬や化学肥料を使う農業)の1.8倍、世界全体では1.32倍。アメリカで話題の研究成果を、日本の有機農業研究の第一人者がわかりやすく紹介。

 

目次

第1章 有機農業の食糧生産力は慣行農業に劣らない
第2章 発見に対する研究者のコメントを検証する
第3章 単収が多いフィリピンのバイオダイナミック農法
第4章 日本の有機農業の生産力
第5章 有機農業は世界(全人類)を養える

書評

書評オープン


有機農業の単位収量は慣行農業より劣る――。この一般的な常識を覆すような研究論文が、米国の学術雑誌に掲載された(2007年6月)。
 発表したのはミシガン大学の研究チーム。有機農業は開発途上国では慣行農業の1.8倍(先進国では0.9倍)、世界平均で1.3倍になるという。この発表を著者が解説する。表題の「有機農業で世界が養える」とは、逆説的な表現ではなく、正当な主張なのだ。
 著者は有機農業の専門家で、06年まで農水省農林水産政策研究所に勤めていた。本書では、論文を精査しながら、ほかの研究者の批判なども紹介する。
 ミシガン大の“発見”は、これまで発表された研究資料の293標本を基にした。開発途上国では、豆類は3.99倍、果物が2.5倍、有機農業が慣行農業を上回っている。

『日本農業新聞』(2009年8月3日)


「有機」の意義 再考
 「有機農法は慣行農業より生産性が低い」といわれ続けてきたが、その常識を覆す書籍が7月に出版された。タイトルは『有機農業で世界が養える』(コモンズ)。2007年に発表された米国ミシガン大学研究チームの論文を基に、有機農業の潜在的な食料供給力の高さを実証しようとした一冊。著者は、06年に農水省農林水産政策研究所を定年退職するまでの30年以上、有機農業一筋だった研究者・足立恭一郎氏だ。
 同論文は、各国293事例を調査した結果、先進国では有機農業の単位収量が慣行農業よりやや低いが、途上国では80%程度も高く、両者を併せた世界全体では、有機農業が32%も高かったという。足立氏は同論文、その批判論文を考察しながら、日本内外の有機農業の現状も踏まえて、その正当性を訴えている。
 研究所在籍中、農政の中でも有機農業研究者は異端視されていた。だが「有機農業を軸にした消費者との提携が、自由化の中で日本農業の生き残る道」との信念を曲げず、有機農業学会の設立や有機農業推進法の制定に奔走した「行動する研究者」だった。著書は多少難解な部分もあるが、日本の中での、有機農業の位置づけを改めて考えさせてくれる。—略—

『日本農業新聞』(2009年9月28日)


『日本農業新聞』(09年8月3日)、『朝日新聞』(09年8月5日)、『電子耕』(09年8月6日号)『キューバ有機農業ブログ』(09年8月16日)、『自然と人間』(vol.159、09年9月号)、『ガバナンス』(NO.,101、09年9月号)、『技術と普及』(vol.46、09年9月号)、『日本農業新聞』(09年9月28日)、『農業と経済』(09年11月号)、『野菜だより』(2009年冬号)、『農業共済新聞』(09年10月14日)、『ふぇみん』(No.2904、09年10月15日号)、「土と健康」(No,410、09年10月号)、『食べもの文化』(No.411、09年12月号)、『月刊フィランソピー』(No.325、09年12月号))、『むすび』(No.604、10年1月号)、『農林業問題研究』(10年12月、第180号)で紹介されました。