山田太一(脚本家)・斉藤次郎(子ども評論家)・池見恒則(河合塾講師)ほか
『子どもとゆく』編集部 編
四六判/272ページ/本体1700円+税
2004年9月/ISBN 978-4906640829
子育てに悩んでいるお父さん・お母さん、生徒のことがわからないという先生、学校がつまらないキミたち。
笑いながら、考えながら、どうしたらいいかが見えてくるかも。
知る人ぞ知るミニコミ誌『子どもとゆく』の巻頭インタビューから、よりすぐって構成しました。大事なのは子どもの側に立つことです。
マニュアルではなく柔軟さを……子ども評論家 斎藤次郎
「子どものサンプルである」という、おとなの自覚……脚本家 山田太一
子どもと楽しくやれているときが幸せ……小学校教員 片桐健司
人間は生きものだから……横浜市寿町で子どもと付き合う 石井淳一
あらためて「社会性」を考える……青少年自立援助センター 工藤定次(タメさん)
居場所がもつ力……バクの会 滝谷美佐保
三〇周年記念式典を遊ぶ……養護学校教員 高崎明
養護学校の素顔……養護学校教員 西川しんや・吉田ももこ
百姓仕事と人間の幸せ……農と自然の研究所 宇根豊
世界のつながり からだのつながり……整体ライフスクール主宰 野村奈央
イマココニイルヨ……シンガー 李政美
いただくものが多いカンボジア教育支援……カンボジア教育支援基金代表 阿木幸男
混迷の「学力低下問題」をよむ……数学塾主宰 池見恒則・『子どもとゆく』編集部 藤田悟
書評オープン 『通販生活』(2005年春号より) ブタの表紙のミニコミ月刊誌「子どもとゆく」は85年、子どもの側に立つことをキーワードに創刊された。その巻頭のインタビュー13編をまとめた。居場所、学力論、障害児、家庭・子どものタブーなど、幅広い論点に及んでいる。 『毎日新聞』(2004年10月15日より) 『子どもとゆく』は「スローガンやお説教を避け、暮らしの場面の具体的な経験をポツポツと語り合うスタイル」で、「子ども」を切り口に社会を見つめ続けてきた雑誌。本書は雑誌からここ数年のインタビュー特集をピックアップし、まとめたものだ。 『クーヨン』(2004年12月号より) 『おそいはやいひくいたかい』(05年2月号No.26)、『子どもプラス』19号(04年10月)、『ふぇみん』(04年10月25日号)、『出版ニュース』(04年11月中旬号)、『読書人』(04年12月24日号)でも紹介されました。
のんびりしたタイトルとキュートなブタのイラスト。「なにより大切なのは子どもが元気で楽しくいること」のメッセージ。ああ、いいな。子育てに追われるだけでなく、たまにはゆったり子どものことを考えてみよう。 そんなつもりで手にとったのが本書。学校や塾の先生、不登校の子どもを支援する人、農業を営む人、整体スクールの主宰者など、さまざまな分野の人たちが、子どもとの関わりの中で感じたこと、教育の実践を語っている。
どんな分野でも現場でなければわからないことがあるもの。子どもの世界しかり。このインタビュー集は、「常識」と思っていたことが、実は単なる思いこみや、ニュースの受け売りにすぎないと気づかされる話が多く、実に痛快だ。
「生きていくうえで大切なものは初期に身につく」とアドバイスするのは子ども評論家の斎藤次郎さん。脚本家の山田太一さんは「子どものサンプルであるという自覚を」と大人をうながす。「教育は雇用づくり」(河合塾講師・池見恒則さん)といった本音まであって、効率性への警鐘とともに、息せき切って子どもを先導し、型にはめなくてもよいと思えてくる好著だ。
脚本家の山田太一さんは、「子どもに対するサンプル」である大人は、「常識」に疑問をもつ柔軟さと、してはいけないことを知る「タブー」の感覚が必要だ、と言う。「子ども」のことを考えることは、自分自身を見つめ直すことでもあるのだ。