瀧井宏臣(ルポライター)著
四六判/208ページ/本体1500円+税
2002年7月/ISBN 978-4906640553
問われているのは、日本人の食べ方と農業への考え方。
安全性と安さと、どっちが大切ですか?
『週刊文春』02年8月8日号でも話題になりました!
第1章 腐らないシイタケの怪
価格破壊で採算ライン割れ
国民的大問題
シイタケが腐らない?
公然の秘密
中国産の重金属汚染
ホルムアルデヒドで施設を消毒!?
天然成分かどうかは不明
激安の代償
第2章 食卓に上る毒菜
激増する中国産野菜
開発輸入で経済植民地に
農民団体の独自調査が明らかにした実態
急増する農薬残留基準のオーバー
お寒い水際の防御体制
くん蒸という関所
負の多重リスク
第3章 香港「毒菜」戦争
香港で中国野菜を探る
ドッチョイの恐怖
「毒菜経理」に会う
香港・毒菜の全貌
香港在住日本人の証言
被害者に聞く
香港ドリームの体現者が経営する中国の信誉農場
野菜の輸出基地
中国での農薬濫用は変わっていない
第4章 水際の攻防
ようやく検疫体制の強化へ
仰天する調査結果は事実だった
毒菜中毒一〇万人説
開発輸入といっても安全性には疑問
毒菜の元凶を検出
冷凍野菜の農薬汚染が表面化
摘発が相次ぐ冷凍毒菜
第5章 中国版「沈黙の春」
無視された取材申請
日米での禁止後もDDTやBHCを使っていた中国
蛙が少なくなっていますよ
農薬汚染大国・中国
深刻な同時発生的環境汚染
第6章 毒菜死者年間五〇〇人?
変わらぬ汚染状況
農薬中毒の実態
農薬中毒推定一〇〇万人
毎年五〇〇人が毒菜中毒で死亡
法整備は進んだけれど……
第7章 日本の「複合汚染」
父も母も農薬で死んだ
大平流有機農業
日本の農薬使用量はアメリカの七倍
四人に一人が農薬中毒
パラコートの悪夢、慢性中毒の恐怖
複合汚染の代償
第8章 日中の環境協力を
民間ベースの協力活動
フッ素中毒の共同研究
政府間協力による農薬汚染の解消
第9章 地産地消が地球を救う
国産野菜生き残りのポイント
国内農業を支える生協・共同購入グループ
外食産業と流通の革命
消費者参加で食べ物の安全を守る
書評オープン 『朝日新聞』(2002年9月13日より) 十年前、香港で起きた事件が日本で再現─—。今月『食卓に毒菜がやってきた』(コモンズ)を出版したルポライターの瀧井宏臣さん(43)は、消費地・香港と産地・広東省の取材を通し、「中国ではすさまじい農薬汚染が広がっている」と、中国産野菜をめぐる問題の根深さを指摘する。同時に、「この問題は食品汚染や環境汚染にとどまらず、中国農民の健康被害も招いている。日本では、地産地消で身近な農業を守り育てることが必要」と力説する。 『日本農業新聞』(2002年8月21日より) 一連の取材と多くの資料・文献から中国産野菜の危険な実態を明らかにし、問題の本質を探っている。香港と中国南部の取材をもとに、表にでなかった中国の凄まじい農薬汚染や農薬中毒の様子を描いている。 『農業共済新聞』(2002年8月7日より) 「まさか何度も洗った上に湯がいた野菜から、あんなに農薬が出るとは思いませんでした」。中国から冷凍野菜を輸入している日本の業者が漏らした言葉は、おそらく本音だろう。 共同通信より各紙へ配信(2002年8月) 本書にも詳しく述べられているが、中国産の腐らないシイタケは自然由来の40倍以上のホルムアルデヒドが検出されており、値を見る限りはホルムアルデヒドにより殺菌処理をしていると考えざるを得ない。ホルムアルデヒドは毒物でもあり我が国では食品への添加は認められていない物質である。 『週刊現代』(2002年9月14日号より) ・「温床」はいまだ各地に 『サンデー毎日』(2002年11月24日号より) そのほか、『全国きのこ新聞』(2002年8月2日)、『宮崎日日新聞』(02年8月18日)、『ガバナンス』(02年10月)で紹介されました。なお、『環境&ビジネス』 2002年12月号に、著者インタビューが載りました。
日本への輸入野菜のうち半数を占める中国産野菜。今年に入って冷凍ホウレンソウなどで基準値を超える残留農薬が見つかる例が続発している。その中国産野菜の実態を追った。
日本での手薄な検疫の実情のほか、すでに80年代末から、中国産野菜による残留農薬中毒の被害が問題になっていた香港での対策や、消費者の声をリポート。数々の統計や調査をもとに、中国での深刻な農薬汚染を報告、農薬中毒患者が100万人にも及ぶとみる研究者の推定も紹介している。
安全な野菜を食べ、環境を守るため、日本の消費者は、できるだけ自分たちが住む地域で生産された食べ物を選ぶ「地産地消」を実践することが大切だと説いている。
本のタイトルにもなった「毒菜」(ドッチョイ)は農薬に汚染された野菜を指し、香港市民から恐れられている。かつて香港では、中国産野菜で年間五百人前後が食中毒を起こし、病院にかつぎ込まれたという。
昨年七月、現地報道で、一家五人がネギとショウガを添えて蒸した魚を食べたところ、舌や手足のまひ、めまいなどの症状が起き、救急車で病院に運ばれた。食べ残った中国産ネギから使用が禁止されている殺虫剤のメタミドホスを高濃度で検出した(『食卓に毒菜がやってきた』から)。
瀧井さんは、「毒菜問題の早期解決は難しい」とみる。日本企業のずさんな開発輸入、農薬知識のない農家……。見た目がよく、高く売れるため、収穫前に農薬散布することは日常的だという。
農家の健康への影響も深刻。著書では、JA富山厚生連と中国との共同研究から、全土で五十万〜百万人の農薬中毒者が出ていると推定する。
だが香港では、こうした野菜は「毒菜」(ドッチョイ)と呼ばれ、以前から恐れられている。
国産野菜より高濃度の農薬の残留は覚悟しなければならない。
しかしながら本書の最大の特色は、ただ単に”中国産の野菜が危ないですよ”と警鐘を鳴らしているのみではない点にある。何故、中国産の野菜の輸入が急増しているのか。その背景として日本の企業によるいわゆる開発輸入の問題を挙げている。「中国産とは名ばかりで中国の土地と安い労働力を使って日本人が食べる野菜を作っているにすぎない」という経済的な植民地化の問題である。
それではこれらの問題にどう対処していくべきだろうか。21世紀を安全と安心の世紀とすべく、本書の著者はこの面でも多くの提言をしている。一つは日中の環境協力であり、もう一つは国内の野菜産地が生き残るポイントとして、業務用需要にこたえる生産体制の構築、地場生産・地場消費の拡大、流通ルートの複線化などである。
“安全な野菜”への関心が高い。野菜産地では、減農薬、減化学肥料による栽培が進められている。その一方、安価であることを理由に輸入農産物がどんどん増えてきた。野菜の輸入先はトップが中国で十年前に比べて倍増した。だが、中国では今、農薬汚染大国だという。
中国産シイタケが腐らないのはなぜか。著者は「輸入野菜の現状と安全性」をテーマに残留農薬に汚染された野菜、中国「毒菜(ドッチョイ)」を取材する。本書は衝撃の農薬汚染リポートだ。
中国での農薬中毒者数は、年間で五十五万人以上、死者が一万人以上と推定されるという。香港では、一九八〇年代末から「毒菜」が深刻な社会問題になっていて、多数の毒菜中毒者が出ている。
香港の野菜は、八五%が中国本土で栽培されたものだ。「香港ではきれいな野菜をほしがる。見かけがきれいだとよく売れるのでたくさん農薬をかけてしまう。かけてから二〜三日で収穫し、販売している」と農民の証言。
さて、無・減農薬時代の日本ではどうか。この夏、土壌殺菌剤、殺虫剤など無登録農薬を使用した農家の野菜、果物が大量に廃棄処分された。中国ばかりを責められない「温床」は、まだ各地にある。
商品価値を上げるために農薬が使われ、たとえばメロンは果皮の網目の良さで価格が変わる。相変わらず見栄えのいい野菜が好まれている。
全国各地に農産物直売所が増えてきた。生産者自らが売る場所だ。毎朝収穫した新鮮な野菜が並び、どこもにぎわっている。先日岩手県で、野菜を作ってきて五十年というSさんにお会いした。「食べる人の顔が見えるので、野菜作りがますます面白くなってきたよ」と言った。安全な野菜、旬の味は、それぞれの地域の小さな畑で作られる。