有機農業のチカラ――コロナ時代を生きる知恵(大江正章)

大江正章〈著〉
本体1700円+税、四六判、256ページ
ISBN:978-4-86187-168-9 C0036 2020年10月30日

コロナ時代を生きる私たちは、グローバリゼーションと高度成長・都市化を見直し、ローカリゼーションと食料自給へ向かわざるを得ない。持続可能性を考えれば、有機農業への大転換という道しかない!

目次

まえがき
プロローグ 有機農業感性と田園回帰
一. 日本の有機農業と有機農業学会
二. 有機農業の定義
三. 有機農業の五つの波
四. 日本の有機農業の現在
五. 学校給食・田園回帰・有機農業
六. 有機農業的感性

Ⅰ 食・農・地域を守る思想
一. 中国バッシングでは何も解決しない
二. 半径三メートルの安全性を超えて
三. 都市と農業に接点を創る
四. 有機農業が創り出した地域循環型経済
五. 農民の知恵のグローバリゼーション
六. 他人事から自分事へ

Ⅱ 学校給食と有機農業と地域づくり
1 全量地元産有機米の学校給食と有機農業●いすみ市(千葉県)
一. ゼロから広げた有機稲作
二. 学校給食への導入
三. なぜうまくいったのか――公と民の連携
四. 有機稲作がどこまで広がるか
五. 地元産有機米給食が地域の発展にどう寄与するか

2ソウル市の学校給食における有機農産物導入政策に学ぶ
一. なぜ注目されているのか
二. 日本の学校給食の現状
三. 親環境農産物を学校給食に導入し、都市農村共生社会をつくる
四. 市民運動から政策へ
五. ソウル市の親環境農産物調達システム

Ⅲ 地域に広がる有機農業
1 有機の郷をつくる――中山間地域こそ有機農業
一. 有機農業に積極的な島根県
二. 有機農業は環境保全型農業の延長ではない
三. 有機農業の担い手を農林大学校で育てる
四. 自給をベースにした有機農業

2 多面的な有機農業の展開――埼玉県を事例に
一. 埼玉県の農業の変貌と現在
二. 有機100倍運動と有機農業
三. 多様な広がりをもつ小川町の有機農業
四. 農林大学校有機農業専攻を卒業し、有機農業の担い手に
五. 開発から排除される存在としての障がい者と農業
六. 有機農業とグリーンツーリズム
七. 有機農業の多様性と地域づくり

Ⅳ 田園回帰と有機農業
1 農を志す若者たち
一. 若者たちの志向が変わってきた
二. 新規参入者の増加と有機農業的志向
三. 農協の有機農業研修制度で就農へ
四. 有機農業のすべてを学ぶ塾を卒業して就農
五. 都市から地方への人口移動が始まった

2 脱成長と田園回帰
一. 都市型社会に未来はない
二. 脱成長の時代
三. 若者世代への価値観の転換とGLH(地域総幸福)

3 地域の希望を創る――田園回帰と有機農業
一. 私たちは幸せなのか
二. 田園回帰が進む地域の共通項
三. 有機農業を志向する新規参入者たち
四. 地域づくりの四つのポイント

Ⅴ 東日本大震災から考える
1 放射能に克つ農の営み――苦悩のなかから福島に見えてきた光
一. ぱったり途絶えた注文
二. 100km以上離れているのに…
三. ネットから始めて首都圏での直接販売へ
四. 放射能に克つ土の力

2 内発的復興と地域の力
一. 基本理念と生業の振興
二. 七つの重要な視点
三. 経済成長優先主義から脱成長へ
四. 内発的な力と外発的な力の交響

3 耕す市民の力

Ⅵ 協同組合と都市農業
1 本来の農を育てる協同組合になってほしい
一. イメージの悪さと存在感のなさ
二. 有機農業のまちの意欲的な農協が始めた新規参入制度
三. 農協はいのち・食料・環境・暮らしを守り育む仕事
四. 本来の精神に立ち返る

2 都市農業の新たな地平
一. 地産地消で消費者とつながり高収入、独自の販路開拓も
二. 都市農業の法的位置づけの変遷
三. 都市農業の役割と必要とされる新たな政策
四. 学校給食と都市農業
五. 地域づくりへの目線と活動を

Ⅶ 自治体職員・首長へのメッセージ

1 震災復興が語る農山村再生
2 新規就農者を育てるオーガニック朝市
3 地域主義と田園回帰
4 高畠で三つの発見
5 幸せを生みだす市民的経済
6 自由貿易VS保護貿易を超えて
7 住民参加で創る公共図書館
8 ギャップを埋める
9 放牧制限をめぐって

エピローグ 高松さんと明峯さんと、ぼくの活動
一. 「たまごの会」との出会い
二. 高松さんとの20年間
三. 明峯さんとの24年間
四. 二人の方針はどこが違ったのか
五. 高松田んぼとアジア太平洋資料センター

著者プロフィール

大江正章

ジャーナリスト、全国有機農業推進協議会理事。

1957年生まれ。経済成長優先社会を問い、暮らしを見直すメッセージと新たな価値観・思想をわかりやすく伝えることをモットーとする。主著に『農業という仕事――食と環境を守る』(岩波ジュニア新書、2001年)、『地域の力――食・農・まちづくり』(岩波新書、2008年)、『地域に希望あり――まち・人・仕事を創る』(岩波新書、2015年、農業ジャーナリスト賞受賞)。

 

書評オープン


『技術と普及』(2021年1月号)、「日本農業新聞」(2021年1月17日)、「食べもの文化」(2021年2月号)、『農業と経済』(2021年3月号)、『消費者レポート』(2021年2年)、「社会新報」(21年2月24日)、「図書新聞」(2021年7月24日、3505号)で紹介されました。