浜田久美子(愉快な山仕事主宰) 著
四六判/240ページ/本体1800円+税
1998年9月/978-4906640157
木には心を癒す大きな力がある。森と出会って迷いから抜け出した体験と各地で楽しみながら森を育てる人びとのルポを通して、森林と市民との新しい結びつきや保全のあり方を描く。内山節氏推薦!
プロローグ 週末は森づくり
第1章 森の力
1 木との出会い
2 森という扉
3 森づくりを学ぶ
4 楽しみながら森を守る
第2章 森をつくる人びと
1 森づくりの扉を開けた人びと
(1)魚は川に、私は山に
(2)身のこなしを求めて
(3)木への思いを一歩ずつ
2 森づくりのメッセージを発信する
(1)森を知り、自分をつかむ
(2)我が庭は里山
3 山へ移り住む
(1)森のお世話役の誇り
(2)森林業に吹かせる風
4 森づくりを志す人たちを受け入れる
(1)はぐくむ人、はぐくむ山
(2)兄貴がやるなら、おたっちゃおれん
第3章 あなたも森づくりを始めませんか
1 森とのすてきな出会いのために
2 楽しみながら学ぶ実践講座
3 森林体験ツアー
4 森づくりグループの情報はここにある
第4章 森を守り育てるために
1 市民からの政策提言
2 森林ボランティアと人の緑化
3 地域ごとの開かれた仕組みづくり
あとがき
書評オープン 『読売新聞』(1998年10月13日より) 大学院で学んでいた著者はある時、森の魅力と出会い、人生の迷路を脱する。その経験を軸に都市近郊から山奥まで各地の森を歩き、間伐や炭焼きも含めた山仕事を楽しむ人々の姿を丹念に追った。素人のための「森林塾」の活況は崩壊寸前の日本の森林に一条の光を投げかける。巻末には各団体のリストも。 『日本経済新聞』(1998年10月27日より) 横浜市保土ヶ谷区に住む浜田久美子さん(37)が「迷路にはまり込んだような行き詰まり」を感じたのは大学院で臨床心理学を専攻していた1989年。眠れない。あおるように酒を一気に飲む。自らの選んだ進路に生じた疑問は、解明できない空虚感となって浜田さんを苦しめ続けた。しかし、浜田さんは”出口”を見つける。「木に抱き着くと、不思議な充足感に満たされた」というのだ。 『神奈川新聞』(1998年10月23日より) ※そのほか、『朝日新聞』(98年10月27日)、『毎日新聞』(98年10月10日)、『信濃毎日新聞』、『趣味の園芸』(99年1月)、『學鐙』(98年11月)、『田舎暮らしの本』(98年12月)、『出版ニュース』(98年11月)、『武蔵野から』(98年11月・12月号)、『公明新聞』(98年11月23日)、『1年の学習』(98年12月)、『がぶり』(98年12月)などで紹介されました。
林業には縁もゆかりもない。しかし、つてをたどっては森に入り、ボランティアよろしく間伐などの山仕事をする人々が増えているという。
そんな人々の群像を、自らも「余暇」の山仕事に打ち込む著者がリポートしたのが本書。登場する人々の仕事ぶりはそれぞれ違う。しかし、自然と切り離された生活の中で失われがちな<生の充実感>を、彼らは確実に味わっている。
ひとりの女性が語っている。「山づくりは子育てに似ている」。そろばんずくではない生き方が輝いて見える。
大学院中退を決断した浜田さんは全国のブナ林を、ヒノキ林を、雑木林を歩いた。長野・伊那谷へ毎週、車を飛ばすようになったのは95年春。森の手入れに不可欠な山仕事を学ぶためだった。
「森をつくる人びと」は、浜田さんの森づくりに取り組むまでの道筋を第一章とする。第二章は、釣りや炭焼き、植林ツアーなどを入り口として森に足を踏み入れた人々や、地方の森林組合に転職してプロを目指す都会の若者たち、森林ボランティアとしての道を模索するグループなど、浜田さんが出会った老若男女を紹介。第三章は山仕事入門講座や活動場所などの情報が網羅されている。
「木に引っ張られるように」再起を果たした浜田さんは、ライターとして歩みを進めているが、「森は水源や二酸化炭素を固定する装置としてのみ存在するわけではなく、木材生産だけの場でもない。森林が健やかであってこそ、私たちの暮らしも健やかでいられるのではないか」と話している。