山下惣一 編著
四六判/224ページ/本体1500円+税
2001年11月/ISBN 978-4906640447
たしかにマクドナルドや吉野屋、輸入野菜や中国産うなぎは安い。でも、どんな素材が使われている?残留農薬は大丈夫?日本の農・漁業は潰れてもよいのか。徹底取材で安さの陰に潜む矛盾を暴き出す。
第1章 六五円ハンバーガーの裏/榊田みどり
1 マクドナルドの食材はどこから
2 安売りの戦略
3 安さのからくり
4 食材は危ない!?
5 六五円ハンバーガーは食べ物なのか
第2章 牛丼戦争の実態/郡司和夫
1 狂牛病の衝撃
2 疑問が多い食材の出所
3 安さのからくり
4 牛丼は健康によくない
第3章 激増する輸入野菜は安全か/瀧井宏臣
1 貿易紛争勃発
2 産地の悲鳴
3 輸入野菜はなぜ激増したか
4 危ない輸入野菜
5 野菜自給への処方箋
6 セーフガードの絶望と希望
第4章 ウナギもワカメも中国産/林 克明
1 ウナギの八五%は外国産
2 中国産の衝撃
3 こだわって育て、価格差の意味を伝える
4 ワカメ産地の悲鳴
5 生産者、輸入業者、消費者に求められること
第5章 安さの陰にひそむ矛盾●自由貿易が食と農を破壊する/古沢広祐
1 価格破壊が進むアメリカで何が起きたか
2 農産物価格の低下と淘汰が進むアメリカ農業
3 小規模農業を支える動き
4 激化する経済のグローバリゼーション
5 地球的視野からの食料・農業保全政策を
第6章 食べものには、まっとうな値段がある/山下惣一
1 大きくなってはいけない
2 食のユニクロ化は是か非か
3 中国の農民はセーフガードの被害者か?
4 構造改革より身土不二
書評オープン 『西日本新聞』(2001年12月2日より) ハンバーガー一個六十五円、牛丼並み盛り二百八十円。スーパーには、目を疑う安値の輸入野菜が並ぶ。なぜそこまで安くできるのか。だれもが疑問を感じながら「安さ」の前には長蛇の列ができてしまう。これが今の日本の現実だ。 『全国農業新聞』(2001年11月23日より) 食の分野でも際限なく進む国際化と低価格化。それがもたらすゆがみを、6人の筆者が取材し、疑問を突きつけた。 『朝日新聞』福岡版(2001年11月24日夕刊より) 「価格破壊」の裏で何が起こっているのかを、第一線で活躍するジャーナリスト、研究者らが伝える。日本の食はどこへ行くのかと考えさせられる。 『日本経済新聞』(2001年11月26日より) 65円ハンバーガー、280円の牛丼、と価格破壊が進む外食産業。その食材はどこからくるのか。安全に問題はないのか。安さのからくりは? 『公明新聞』(2001年11月25日より) 出口の見えない不況下で、値下げ競争がくり広げられている。なかでも食の世界のそれは熾烈をきわめ、ついに65円ハンバーガーや280円の牛丼が出現した。なんでそんなに安くできるの? 首を傾げる消費者は少なくないであろう。一方、狂牛病をめぐる騒動は食の安全性がいかに不確かなものであるか、改めて知る契機となった。 『健康ファミリー』(2002年1月号より) 世の中信じられないほど過激な安売り合戦が展開されている。安いのはうれしいが、本当にそれでいいのか、本書は真正面から問いかけたもの。 『ふぇみん』(2001年12月5日号より) 消費者にとって物が安いのはありがたい。が「食べ物にはまっとうな値段がある」と著者。食と農業に精通している五人のジャーナリストらが安い輸入野菜、ハンバーガーなどの背後で何が起きているかを追及。農村の疲弊、地域社会の崩壊現象などからの問いかけもしている。 『東京新聞』(2001年11月26日より) 成長ホルモン剤が混じった牛肉、いつまでも腐らないシイタケ、効率偏重が生んだ狂牛病。ハンバーガーや牛どんの値下げ競争や国産の半額でスーパーに並ぶ輸入野菜の急増の裏には、人々の食生活を脅かすさまざまな危険が潜む。 『福島民報』(2001年12月8日より) 65円のハンバーガー、280円の牛丼、格安の輸入野菜……。巷にあふれる「安さ」を競う食品は、消費者を豊かにするのか? 安さのカラクリ・問題点は? 価格競争の果てに何が待っているのか?--本書で6人のジャーナリスト、学者が検証する。エサに大量投与された成長ホルモンや抗生物質が心配なアメリカ産の安い牛肉、輸入野菜の農薬など、「安さ」のためにないがしろにされた安全性や、農村の荒廃などの社会構造の変化が、将来の日本経済や日本人の命のコストへ跳ね返ってくると本書は警告している。 『週刊現代』(2001年12月22日号より) 「環境汚染から子供たちを守る術。便利な暮らしとの訣別」 『ソトコト』(2003年5月号より) たとえ狂牛病の恐れが無くとも、牛丼がもたらす健康への弊害は馬鹿にできない、と山下惣一編著『安ければ、それでいいのか!?』(コモンズ、一五〇〇円+税)は教えてくれる。発ガン性が問題になっている合成ホルモン剤と抗生物質の牛への投与は、アメリカでは常識になっているし、付け合わせのショウガなどには食品添加物が大量に使われているからだ。(中略) 『週刊文春』(2004年7月29日号より) そのほか『モノ・マガジン』(2001/12/16号)、『ダ・ヴィンチ』(2002/1月号)、『出版ニュース』(2001/12月中旬号)、『食べもの文化』(02年3月)、『日本養殖新聞』(02年2月5日)、『農業と経済』(2002年5月号)、『食べもの通信』(2002年4月号)、『全国きのこ新聞』(02年1月18日)などでも紹介されました。
「グローバリゼーション」という妖怪が世界を徘徊している今、身近な食と農を守るために私たちは何をすべきか。この本のテーマを一言で言えば、そういうことになろうか。世界貿易機関(WTO)閣僚会議が中国の加盟と新貿易交渉の開始に合意したその翌日(十一月十五日)、この本が発行されたのも何か因縁めいている。
本ではジャーナリスト四人がそれぞれ、六十五円ハンバーガーや二百八十円の牛丼、中国などからの輸入野菜・水産物にみる価格破壊の裏側をリポート。大学教授が米国の現状からグローバリゼーションと自由貿易の問題を整理し、農民作家の山下惣一さんがまっとうでない安値の本質に農の現場から迫る章で締めくくっている。
全編に通底するのは「安さの陰で徹底した利益追求」への異議申し立てである。リポートから、成長ホルモン剤使用の米国や豪州産の肉牛、ポストハーベスト農薬などを使った野菜の輸入でコスト削減する日本の外食産業の実態が浮かび上がる。そこに、いのちをはぐくむ「食」へのこだわりはうかがえない。金の論理最優先だ。
それにしても、激安ハンバーガーの社長が言ったという「農民も海外に出ていけばいい」には驚いた。では自然環境はだれが守るのだろう。農山村が荒廃したら都市の水源などはどうなるか。農業が「自然」をつくっていることを無視した市場原理万能主義的な発想が中央政財界や一部言論人に根強い点が、実は問題なのである。
もっとも米国からの報告によると、大資本の農業支配でコミュニティー崩壊が起き、貧富の差が拡大した同国では小規模家族農業が再評価され、市民団体などの支援でファーマーズマーケット(直売所)が増えているという。草の根市民や農民の地道な運動が世界的に共通する農業再建のカギ、という指摘は全くその通りだろう。
際限のない欲望に追われ、効率最優先の近代化農業にほんろうされる農民の喜怒哀楽を著作で表現してきた編者の山下さんは「身近な農業が命と環境を守る」とし、こう提起する。「あなたはどんな社会を支持するか」。問われているのはもちろん消費者である。
安いことはいいことだ。ありがたい。だが、安さの陰で、農家はつぶれ、地方都市の商店街はもぬけの殻。「うちのハンバーガーは肉骨粉を使わないアメリカ産の牛肉だから安全」でも、EUが禁止している成長ホルモン剤を使っている。
じゃあ、どうすればいい? 五人のジャーナリストと研究者が綿密な取材をもとに、安さのからくりとその裏側を明らかにした。本紙「本音のホンネ」でおなじみの著者も中国取材などをふまえ、「食べ物にはまっとうな値段がある」と食のユニクロ化を憂う。
食材を海外に依存し、徹底した合理化や大量廃棄の上に成り立つ65円ハンバーガー。残留農薬など、安全面のチェックに不安がある輸入野菜。さらにウナギやワカメも、労賃の安い海外での生産が急増するにつれ価格は下落、日本と現地双方の生産者に打撃を与えていること。「安い」と喜べない実態が明かされる。
一方、米国に滞在中の研究者は、消費者の側に生まれ始めた、小さな農家や直売所を支える動きについても報告している。
「食べ物にはまっとうな値段がある。安いものを食べることは命にコストをかけないこと」と編著者はいう。安さのために費やされるものを知り、何を選ぶか。問われているのは、一人ひとりの判断だ。
安さを追い求めて「健康」をないがしろにするばかりでなく、地域社会を破壊し、伝統文化を消滅させていくさまを、目の前に見せてくれる。「食べ物にはまっとうな値段がある」という著者の言葉は重い。
さらに、激増する輸入野菜、ウナギもワカメも中国産……。輸入攻勢に日本の産地では悲鳴をあげるが、一方、輸入激増の裏には日本側の事情による開発輸入という実態がある。日本の農・漁業はどうなるのか--食に焦点をあてて、気鋭のジャーナリストが丹念に調査と取材をし、安さの裏側に鋭く迫った。編者の山下惣一さんは、こう問いかける。「なぜ、そこまで安くできるのか? 背後で何が起きているのか? これから私たちの食と暮らしはどこへいくのか? いっしょに考えてみてください」。
本書は、食と農に精通した4人のジャーナリストたちが丹念に現場を歩き調査・取材した成果をまとめたものである。安さのからくりとその裏にある食の危うさを、見事に描き出してみせてくれる。「安さをありがたがっているうちに、日本の伝統文化が消滅」という編者の指摘に背筋が凍る。
食と農に精通した四人のジャーナリストが、ハンバーガー、牛丼、輸入野菜、ウナギ、ワカメについて徹底的に取材し、安いとはどういうことか、なぜそこまで安くできるのか、背後で何が起きているのか、問題の本質に迫っている。筆者たちの問題意識は常に食卓とつながり、単なる批判や告発に終わっていないのがいい。開発輸入とセーフガードの問題から日本とアジアの関係が見える。グローバリゼーションと自由貿易の問題点についてはアメリカ滞在中の研究者が論じている。
「何を買うか買わないか、何を食べるか食べないかは、どういう社会を支持するかしないかの、信任投票行為なのである」という編著者の言葉にはっとした。
本書は、農民作家の肩書を持つ著者を中心に五人の専門家が、「安さ」をめぐるメカニズムを分析、わたしたちの食と暮らしはどうあるべきかについて論じた。「農産物は安い外国産でよい」と単純に割り切ることがいかに危ういか、改めて思い知らされる。
文=バイオジャーナル編集長 天笠啓祐
幼稚園や保育園などで子どもの食事を作っている人たちと話すと、必ずといってよいほど食物アレルギーが話題になる。数が増えているだけでなく、ほとんどの食物に反応を示す、深刻な子どもも増えている。『アトピッ子料理ガイド』は、食物アレルギーで悩んでいる人向けの実践の書であると同時に、今の食卓に警鐘を鳴らしている本である。食物アレルギーは、環境汚染、輸入食材の増加、体内汚染の進行などが寄ってたかって引き起こしている病気だからだ。
食べ物の汚染を考えていく時、「安ければ、それでいいのか」という問いは大切だ。『安ければ、それでいいのか!?』は、単刀直入にそのことを指摘した本だ。安さを求め、外国から輸入すれば、必然的に食品の安全性は低下する。それとは反対に、食べものは近ければ近いほどよい「フードマイレイジ」という考え方が定着しつつある。距離が延びれば、ポストハーベスト農薬などの問題点が加算されるからだ。
本書では、他に、マクドナルドの六五円ハンバーガーなど激安食品のカラクリや、中国産はじめ激増する輸入野菜から検出される基準値を超える農薬、八〇%以上が輸入品のウナギやワカメによる価格破壊によって日本の生産者が苦境に追い込まれる実態について、五人の著者がレポート。最後に、自身がすでに五〇年間農業に携わってきた作家の山下がまとめている。(中略)
「食のグローバル化はそれにともなうリスクのグローバル化でもある」
「人にそれぞれ価値があるように、モノにもまっとうな値段というものがある」
「安いものを食べるということは、命にコストをかけないということである。いったい命より大切なものって何なのだろうか」。