下田哲也 著
四六判/224ページ/本体1700円+税
2002年3月/ISBN 9784-906640492
※第2374回 日本図書館協会選定図書
精神医学と漢方に精通した開業医の診察室トーク集、メディカル・エンタテインメント。うまく病気とつきあうヒントがいっぱい。あなたの心と体の悩みと凝りが、いつのまにか、ときほぐされていきます。
前口上 医者とハサミは使いよう
私は医学者じゃない
医療をプレイする
好きこのんでなる「病気」
患者の達人
患者は医者にとって最高の教師である
一〇〇点を狙わないで
カルテ開示について
怠惰のススメ─―ちょっと鬱っぽい方のために
小さなことにくよくよ……してみたら?
毛嫌いしないで
ミセス・パニックへの手紙
「病名」はつくけれど…
実例に則して─―現代医療の問題点を考えてみる
健康ビジネスにご注意を─―たまには「医学的」に
アトピー性皮膚炎について
お年寄りの精神科-ぼけたかなと思っても
お年寄りの精神科パート2-痴呆VS漢方
眠れないあなたへ
漢方屋の思考回路1
漢方屋の思考回路2
生理の生理?生理の病理??
漢方屋の診察室
編集長への手紙─―あとがきの前に
あとがき
書評オープン 『朝日新聞』(2002年4月7日より) ・精神医学系漢方医の診察室トーク 『Nursing Today ナーシング・トゥデイ』vol.17 No.7(2002年6月号より) ・ゆっくり読めば、おもしろい 『月刊 総務』(2003年2月号より) そのほかに、『出版ニュース』2002年4月中旬号、『こだわり出版センター会報』2002年5月号、『ナーシング・トゥデイ』2002年6月号、『月刊 地域医学』Vol.16などで紹介されました。
「精神医学系漢方医」が「良い医師患者関係のために」書いた「読む漢方薬」。医療は医学という道具(知識の体系)を使い、個々の患者にあわせて対処するスポーツ的技術だという。そして、自分は診療するプレーヤーだと宣言する。本書では、高血圧や糖尿病から生理痛まで、病気とのつきあい方を具体的に例示し、「患者の達人」への道をとく。一番の近道は、ウマのあう医師を探すことみたい。
精神科と漢方を表看板にする開業医が、疾病解説・薬の処方例から医者を賢く使うノウハウまで、親しみやすい口調で語る。究極のインフォームド・コンセントとして患者自身に漢方の処方を任せたり、「医療はプレイする(=対戦・演じる)もの」と、そのゲーム的側面を指摘したりと、著者の発想は実にユニーク。また、いい医者を選ぶ秘訣は「感性でウマの合う相手を探し、そこそこ満足できたら浮気しないこと」だとか。慢性疾患を抱える患者としっかり向き合い関係を作っている「かかりつけ医」の姿がここにある。
日数の限られている「ブックガイド」の仕事だから、この本も初めは速読のかまえで読み始めたが、そうすると著者の「いいわけ」調の文章が気になり出し、「失敗本かな」と思ってしまった。
ところが、著者の姿(精神科医兼漢方医としての開業医)が見えてくるにつれ、これは「まじめな医者が、大まじめに書いた本」かもしれないと思い直し、少し読書スピードを下げて読み始めた。すると、なかなかおもしろいのである。
著者が「明言」を避け、ちょっと「書きよどむ」向きのある部分などもまじめに考えてみると、「せっかちに断言するのは、正しくないと思ったのだろうな」と推測できる。
漢方についても、一部の漢方医のように「西洋医学はダメで、漢方こそ勝る」などとは書かず、漢方医学を支えている人間観察についてはかなり詳しく紹介しながらも、「西洋医学を否定する者はダメ」と、はっきりした態度を表している。
要するに、この本はゆっくり読めばそれ相応に「おもしろく、ためになる本」だ。とくに筆者が力を入れている「うつ病」と「アトピー」については、ひじょうに興味深い。