水とガンの深い関係──都市の水は安全なのか

河野武平(水問題研究者)著
四六判/184ページ/本体1600円+税
2002年11月/ISBN 978-4906640577

ガンの発生率は地域によって大きく違う!
全国の水系ごとの主要ガンの死亡率を調べて水質との関係を明らかにした本。
あなたの地域は大丈夫? 食生活や水源の環境保全など本質的予防策も提起。

目次

第1章 ガンには地域性がある
 名水の里の危機
 肝臓ガンの死亡者が激増 
 危機意識の薄い行政・政治 
 特定地域にガンが集中する 
 ガンは都市型の病気である 
 肝臓ガンは地域格差が最大 
 関東地方でガンが増加 
 二〇二〇年には現在の一・六倍がガンで死ぬ!? 

第2章 なぜ人間はガンにかかるのか
 ガンと年齢・性別の関係 
 環境汚染による影響は長く続く 
 ガンをもたらす三つの要因 
 食生活と生活習慣を変えてガンを防ぐ 
 筆者の日常生活を点検してみると… 

第3章 水の汚染度をどう見るか
 何が水を汚しているのか 
 水質汚染の指標─—BODと電気伝導率 
 水の安全基準はどうなっているのか 
 一〇項目の数値で水質汚染を判断 
 水の汚染度とガン・乳ガンの相関関係 
 経済の変化が環境にもたらす影響 

第4章 水源から遠いほど肝臓ガンが増える
 トリハロメタンとカルシウムイオンと肝臓ガンの因果関係 
 淀川へ依存する大阪府の飲料水 
 大阪市の肝臓ガン死亡率は日本一高い 
 原因は淀川の水質にあり 
 浄水場から遠い地域、下流ほど肝臓ガンが増える 
 肝臓ガン死亡率が二番目に高い福岡県 
 水質が悪い浄水場の水を飲む若松区で肝臓ガン死亡者が異常に多い 
 産業廃棄物の放置で肝臓ガン死亡者数が約二倍に 
 東京二三区の肝臓ガン死亡者は東部に集中 
 原因は金町浄水場にあり!? 
 利根川水系と多摩川水系の水質が大きく違う 
 利根川では下流域ほど肝臓ガンの死亡者数が多い 
 清流・高梁川の下流域で肝臓ガン死亡者数が急増 
 鉱山からの排水がいまも影響 
 最上川流域でも下流ほど肝臓ガンの死亡者が多い 
 全国一肝臓ガンの死亡者数が低い沖縄県 

第5章 乳ガンの多い地域・少ない地域
 乳ガン死亡率が全国一高い東京都 
 東京二三区では西部に乳ガンの死亡者数が多い 
 乳ガンの死亡者数が多いのは朝霞浄水場の供給地域 
 政令指定都市では京都市がもっとも多い 
 乳ガンの増加を招く陰イオン界面活性剤 
 ダイオキシンや食生活との関係は? 

第6章 水質汚染によるガンの死亡者一万五〇〇〇人!?
 交通事故による死亡者数と比べるのは間違い 
 淀川の水を使ってきた雪印乳業大阪工場 
 水質の影響によるガン死亡者数の推定 
 アメリカでも注目されている飲料水の塩素殺菌とガンの関係 
 塩素殺菌で、すい臓ガン、リンパ腫、白血病が増える 
 遺伝子の操作でガンが防げるのか 

第7章 こうすればガンを防げる
 ガンを予防する効果がある野菜や果物を食べる 
 真空低温調理で抗酸化食を食べる 
 コンビニや量販店の惣菜や弁当を避ける 
 輸入惣菜を食べない 
 ROー逆浸透膜の純水装置で有害物質を除去する 
 トータルミネラルが低い水を飲む
 水利権を流域住民のものにする 
 都市生活者が山林を保全し、水質をよくする 
 健康な高齢者が多い地域に学ぶ 
 身体を動かし、定期的収入を得る 
 近代農業の生産構造を変える 
 環境に合った生活へ 
 疫学的な調査・研究を進める

書評

書評オープン


 筆者は、厚生労働省が毎年発表している『人口動態統計』のデータを駆使して、ガンの死亡者がどのような分布になっているか、徹底的に分析した。その結果、どの地域に住んでいるかでガンにかかるか否かに大きな違いが出ることがわかったのだ。
都道府県別だと、ガンの五十歳代以上の人口十万人あたり死亡者数が最も多かったのは大阪府で七百二十九人、ついで福岡県、埼玉県だった。一方、死亡者が最も少なかったのは長野県五百一人、ついで熊本県、鹿児島県だった。
今や三人に一人がガンで死ぬ時代。他人事では済まされない。「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」の格言を引くまでもなく、ぜひ知っておきたい必読の一冊である。

『週刊現代』(2002年12月18日号より)


このほか、『週刊金曜日』(2003年2月7日号)、『田舎暮らしの本』(03年2月号)でも紹介されました。