中島紀一 著
四六判/224ページ/本体1700円+税
2004年11月/ISBN 978-4906640843
BSEや鳥インフルエンザなど食の異変は、農業の危機を意味している。
農水省や財界が進めている大規模な産業型農業に未来はない。
ひとびとの安全な暮らしを守るためには、食と農を商品化してはいけないのだ。
プロローグ 食の危機、農の危機、そして社会の危機
第1章 食の異変は時代の必然
1 世紀的転形期としての現在
2 食をめぐる奇怪な事件の続発
3 自然と人間・自然と文明様式の齟齬
4 人間の本質としての食
第2章 産業型農業から生活型農業へ
1 「自立」した食、「自立」した農という幻想
2 現実としての平成農業恐怖
3 生活型農業の元気
4 暮らしの視点からの食と農の再建
5 市民主義的な農業という可能性
第3章 食の安全政策のターニングポイント
1 「現代フードシステムに従属する農業」への構造改革
2 「『食』と『農』の再生プラン」「食の安全・安心政策大綱」の問題点
3 「BSE問題に関する調査検討委員会報告」などの再検討
4 「農」と「食」の自立的提携へ
第4章 「リスク分析」の限界と脱農薬政策
1 「リスク分析」は万能ではない
2 農薬問題と「食の安全性」
3 「食の安全」を守るのは食と農の協働
第5章 食と農の断絶をどう取り戻すか
1 充実した食農教育
2 国が進めてきた食と農の分離
3 食と農の断絶の進行
4 新しい食品安全政策における農の食への従属的統合
第6章 地産地消の現代的意味
1 自治体農政の中心的課題となった地産地消
2 地産地消論と新基本法の認識の違い
3 自然と農業と地域社会に支えられた自給・自立
4 地産地消の三つの役割
エピローグ 農業らしい農業の新世紀へ
中島紀一(なかじま・きいち)
1947年生まれ。茨城大学農学部教授・日本有機農業学会会長。総合農学専攻。
現在の農政・農業について、批判的立場から積極的に発言し、環境保全型農業者・有機農業者・生協関係者からの信頼が厚い。
書評オープン 『全国農業新聞』(2005年1月28日より) 病原性大腸菌O157、BSE(牛海綿状脳症)など、食べ物に関連した問題が続発し、国は食の安全性確保を命題に、食品安全基本法を作り新施策に着手した。しかし著者はこうした政策は、問題の根を見ずに、農を単なる食材生産の仕組みとみなし、工業的に商品としての食品を生産する現代のフードシステムjに従属させる方向に向かっていると批判する。 『朝日新聞』(2004年11月21日より) 『朝日新聞』(04年11月21日生活面)、『ガバナンス』(04年12月号)、『農業共済新聞』(04年12月8日)、『田舎暮らしの本』(05年2月号)、『出版ニュース』(05年1月下旬号)、『全国農業新聞』(05年1月28日)、『食べもの文化』(05年3月号)、『プレス民主』(118号、05年2月18日)、『日本農業新聞』(05年3月20日)、『畜産コンサルタント』(05年4月号)、『農林業問題研究』(157号)、『農業と経済』(05年5月号)、『地上』(05年6月号)、『文化連情報』(No.326、05年5月号)、『農林業問題研究』(05年12月号)、『農業市場研究』(2005年12月号)で紹介されました。
本書は、相次ぐ食と農の危機を国の商品化・大規模路線とは異なる「地産地消の生活型農業」によって解決する道筋を描いている。1章で、食をめぐる異変は、いのちとモノの循環に根本的な問題が起きているためであること、生き物としての人間の能力が衰えていることを明らかにする。(中略)
産直や環境保全型農業・有機農業を意欲的に行う農業者や団体関係者に必読の著だ。
食の産業化、グローバル化、近代化農業の見直しこそ、今必要yとされているとして、生産者と消費者の提携、食農教育、地産地消の意義を説き明かしている。著者は、総合農学が専門の茨城大教授で、日本有機農業学会会長を務めている。