三島徳三(北海道大学教授)著
四六判/224ページ/本体1800円+税
2005年7月/ISBN 978-4861870095
地産地消と自給率向上なしには、スローフードは成り立たない。
自給飼料をベースにした、人と家畜にやさしい自然循環的畜産の意義と実践を紹介する。
プロローグ──“豊かな”社会の終焉
第1部 地産地消とスローフード運動
Ⅰ 地産地消とローカリズム
Ⅱ 農産物直売所の実態と意義
Ⅲ 食生活の乱れと食農教育の意義
Ⅳ 日本のスローフードに欠ける観点
Ⅴ 食文化の伝達者を育てる“スローフード大学”
Ⅵ パルミジャーノ・レッジャーノを守る人たち──生産現場にみるスローフード運動
Ⅶ スローフード運動の日本的展開
第2部 畜産を中心とした自然循環的農業の実践
Ⅰ 自然循環的畜産とは何か
Ⅱ 山地酪農と放牧
Ⅲ 牧野放牧型肉牛経営──三瓶山と川村牧場
Ⅳ 里地放牧による環境保全──島根県・山口県の遊休農林地対策
Ⅴ 放牧養豚
Ⅵ イネ発酵粗飼料──全国的動向と埼玉県の事例
Ⅶ 「農民的技術による循環的畜産」をどう発展させるか
補説 近代畜産の論理と倫理
エピローグ──スローで持続的な社会をめざして
書評オープン 『ガバナンス』(2005年8月号より) ……そんな中で著者が掲げるのは本当の豊かさを求める「もうひとつの道」。具体的には、国内外の農産物直売、スローフード運動などを取り上げて検証、特に畜産の面から輸入に頼って濃厚な飼料を与え続ける現在の主流に対抗する、放牧による手間をかけない健康的な畜産について、その数多くの事例をルポルタージュふうに取り上げていく。…… 『北海道新聞』(2005年8月7日より) 『政府刊行物新聞』(05年8月号)、『畜産コンサルタント』(05年9月号)、『自然と人間』(05年10月号)、『文化連情報』(05年10月号)、『日本農業新聞』(05年10月24日号)『農林統計調査』(05年12月号)で紹介されました。
著者は北海道で自ら自給的農業を行い、農業支援のNPO理事長も務める農学研究者。日本農業を取り巻くグローバリズムなどの分析のうえにたって、近代農業のあり方を検証する。そして、利潤と効率ばかりが優先される経済社会そのものの変革が必要であり、そのためにもスローで持続的な社会づくりに向けた地産地消が必要だとする。
本書は、農と食の問題を中心に扱いながら、エネルギー論・若者論などを含めた実践的な社会批評にもなっている。
研究者・教育者として、何とか新たな方向を若者に提示し、それを支える新しい理念をつくらなければ、という切迫感、そして意気込みもしっかり読み取れるのだ。