脱・道路の時代

上岡直見 著
四六判/232ページ/本体1900円+税
2007年10月/ISBN 978-4861870385

限られた財源のもとで、道路整備にどれだけ力を入れるべきなのか?
そもそも新たに道路を造ると渋滞は緩和されるのか?
交通問題への深い知識と豊富なデータをもとに、道路のあり方について再検討し、市民のための道路計画を提起する。

 

目次


はじめに

第1章 道路をめぐる迷信と真実
 1 道路か、移動の自由か
 2 道路整備は交通渋滞を緩和するか
 3 道路整備は環境を改善するか
 4 道路整備は交通事故を防止するか
 5 費用と財源
 6 日本の道路整備は遅れているか
 7 都市の持続性と道路整備

第2章 道路とおカネ
 1 おカネの流れの基本
 2 道路特定財源とその一般財源化
 3 「原因者負担の原則」の徹底

第3章 道路問題の基礎知識
 1 市民は何を知りたいか
 2 道路の基本
 3 道路の「性能」を表現する
 4 道路の計画と評価の手順
 5 経路配分の実際と問題点
 6 配分上の不確実要素

第4章 道路整備は有効なのか
 1 首都圏の道路計画
 2 道路整備の効果はあるのか
 3 裁判と交通量予測
 4 誘発交通の実際
 5 環境対策としての道路整備は有効か
 6 大規模開発・道路整備と環境への影響

第5章 ムダな道路
 1 ムダとは何か
 2 費用・便益の具体的な推計
 3 圏央道の費用便益評価

第6章 市民のための道路計画
 1 「造る時代」から「使う時代」へ
 2 道路紛争と情報ギャップ
 3 道路計画に関する市民のチェックリスト

おわりに

書評

書評オープン


道路特定財源(使用が道路整備に限定されている財源)の取り扱いはどうするべきかいう論議が盛んになっている。本書は、このタイムリーな問題に自動車利用者も市民も納得できる明確な答えを出す。
著者は<自動車に関する税金や高速道路の代金が高いとか、自動車利用者が道路の利用に際して過大な負担をしているという認識は誤り>だと言い切る。道路財源は交通部門の警察官の人件費や交通事故で怪我をした人への医療にまわすことも考えるべきであり、需要に追従して道路を造るという発想から、既存の道路を有効に使うという発想に転換するときにきていると述べている。

『出版ニュース』(2007年12月下旬号より)


そもそも道路とは何なのか。何のために造るのか。行政がすべきことの中で、どのくらいの優先順位なのか。上岡直見『脱・道路の時代』は、道路行政のありかたを根本的に問う本である。常識のウソが次つぎに暴かれる。たとえば、道路を造ったからといって渋滞が緩和されるとは限らないということ。新しい道路ができれば、流入するクルマの量も増える。便利であればあるほど増えるだろう。また、ユーザーが新しい道路を選ぶとは限らない。笑ったのは道路特定財源の支出に関する分析だ。どの地域にどの程度支出されるか、地理的要因との相関関係は希薄だ。だが、自民党得票率とは相関関係が認められるという。もっとも民主党は本書を自分たちへの応援本だと勘違いしてはならない。たとえば著者は、日本のガソリン税はじめクルマにかかる諸税は外国と比べても高くないと指摘する。税金を下げればクルマが増えて道路予算を増やさなければならなくなるだろう、とも。重要なのは移動の自由であって道路ありきではない、と著者は言う。いくら道路ができても、運転できない老人や子どもや病人は移動できない。高速道路より、まずは近所に病院を、である。

『週刊朝日』(2008年3月28日特大号より)


『土木学会誌』(07年12月号)、『出版ニュース』(07年12月下旬号)、『地方自治職員研修』(08年3月号)、『エネルギー・資源』(Vol.29 No.2(2008))、『週刊朝日』(08年3月28日特大号)で紹介されました。