島田恵司 著
A5判/328ページ/本体2800円+税
2009年11月/ISBN 978-4861870422
地方分権推進委員会では何が議論され、分権改革はどこまで達成されたのか。そのスタッフとして深くかかわった著者が、21世紀の政治・行政を方向付ける地方分権のあり方についての議論を整理し、真の分権の方向性について提言する。
まえがき
第1章 分権改革の手法──第一次分権改革の教訓
1 「国と自治体の役割分担」議論の経緯道路か、移動の自由か
2 地方分権推進委員会の議論手法
3 第一次分権改革の事務区分と国と地方の役割分担
4 個別行政における改革効果──教育分野と都市計画分野
5 新たな分権改革の可能性
第2章 第一次分権改革の成果と限界
1 分権委員会の成果──機関委任事務制度の廃止
2 分権委員会と政治
3 分権委員会の限界──成果の裏側としての条例制定権
第3章 第一次分権改革への自治体の対応
1 法施行に向けての「条例整備騒動」
2 分権一括法施行直後の分権効果
3 自治体は第一次分権改革をどう受けとめたか──横須賀市の調査から
4 分権改革の影響としての自治基本条例
第4章 第三者機関の意味
1 第三者機関誕生の経過
2 第三者機関の意義
3 国地方係争の事例──横浜市の勝馬投票券発売税
第5章 「平成の大合併」と三位一体改革
1 何のための「平成の大合併」か
2 三位一体改革は何をもたらしたか
第6章 これからの分権改革
1 次期分権改革の視点
2 改革の具体例1──生活保護を考える
3 改革の具体例2──義務教育における市町村責任
4 国の役割を限定する
5 都道府県の役割を考える──道州制論議と市町村との関係
6 市町村の改革課題
あとがき
書評オープン 『月刊ガバナンス』(2007年12月号より) 新たな分権改革のステップを控えて二〇〇七年秋に上梓された本書は、第一次分権改革を独自の観点から総括し、これからの地方分権に向けての課題を、地域に責任を持つ自治体と市民の立場から具体的な提案を試みている。(中略)具体的な課題について、国と地方が対立してきた生活保護制度や義務教育制度などから着手できると著者はいう。道路・河川・港湾・土地改良などの国の直轄事業を中心とした出先機関の廃止、天下り人事の廃止などを通じて完全自治体をめざすこと。市町村における市民参加の拡充と議会改革などを通じて『あらゆる階層の住民の共同参画による民主主義の実現』をめざすことだという。/そのかなりの部分が、第二次分権改革の俎上に載っている。今度は、問われているのは自治体と住民のほうだ。 『市政研究』(2008年春号より) 『月刊ガバナンス』(07年12月号)、『自治日報』(07年11月30日号)、『月刊自治研』(07年12月号)『地方自治職員研修』(08年1月号)、『市政研究』(08年春号)、『地方自治叢書21』(日本地方自治学会・2008年11月)で紹介されました。
本書では、第一次改革を詳細に振り返った上で、今後の改革への思い切った提案がされている。95年発足の地方分権推進委員会の上席調査員として改革の最前線で活躍した著者の著述には、強い説得力と信頼性がある。
今後の改革には多くの苦難が予想されるが、「地方分権が語る最終的な課題は、人びとの生活のあり方である」という著者の信念は、分権改革の最も根底的な視点である。この視点から目を凝らせば、第二期分権改革の進むべき道が見えてくるはずだ。