四六判/272ページ/本体2000円+税
2015年12月/ISBN 978-486187130-6
16世紀の戦国時代を情報ネットワークの視点から捉えた初めての本。
民衆の知的パワーが躍動し、水平型のネットワークで団結し、個性を発揮した時代。
その象徴は真田幸村。
彼らのダイナミズムは混迷する現代社会の行方に大きな示唆を与える。
プロローグ 戦国の情報ネットワーク分析の歴史的意味
第1章 下からの変革と経済発展の時代
下からの変革による水平型ネットワークの形成
農業と鉱工業の発展
情報産業の相対的遅れ
商業の発展と地方都市人口の急増
新たな職業の形成
補足リサーチ1 知識ネットワーク発信拠点=学校と図書館の歴史
第2章 戦国の社会システムと領国経営
社会の基本構造
能力主義の社会
総力戦としての領国経営
戦国大名の家法
イノベーターとしての戦国大名
補足リサーチ2 下剋上のデータ分析
第3章 戦国の軍事情報ネットワーク 書状による情報伝達
現代から戦国を見る落とし穴
軍事情報ネットワークを支えるツール――書状、使者、飛脚
偽情報を意図して流す謀略大名
謀略の原典『孫子の兵法』
書状の多様な役割
戦国大名たちの書状
戦国大名の書状――リテラシーによる比較
補足リサーチ3 犬を使った軍事情報伝達
第4章 戦国の軍事情報ネットワークⅡ 忍者が担う情報収集・情報攪乱・謀略戦
情報収集・情報攪乱者=忍者の活躍
忍者を駆使した戦国大名
忍者とは何か――忍者の本質
伊賀・甲賀の社会システム
忍者の全国分布と活動の歴史的展開
補足リサーチ4 陸軍中野学校の教育科目に忍術が採用されていた
第5章 真田忍者とイノベーター真田幸村
真田人気がもたらす史実との乖離
修験道・山伏・歩き巫女
真田忍者――二つの顔
真田昌幸による戦術のイノベーション
幸村の書状
幸村による戦術のイノベーション
補足リサーチ5 真田忍者の活躍を古文書で読む
第6章 戦国の情報ネットワーク&意思決定システム
システムの概要説明
信玄と信長のシステム比較
戦国大名の性格の影響
カリスマ型支配による意思決定とアクションの指令
戦国大名によるカリスマ型支配――その歴史的位置
現状分析⇨意思決定の重要性
情報処理能力の低下がもたらす組織の滅亡
補足リサーチ6 戦国時代における「もしも」について
第7章 民衆がつくる情報ネットワーク
複数の社会、複数の情報ネットワーク
戦国の村の特性
悲惨な戦場
文字社会か無文字社会か
音声と口伝えの情報ネットワーク
戦国の民衆がつくる意思決定システムと民衆像
資本主義の精神の形成
補足リサーチ7 戦国の城を現地調査する
第8章 戦国の情報ネットワーク 特性・全体像・世界史的位置・文化との関係
基礎単位――民衆の情報ネットワークシステムの特性
戦国大名の情報ネットワークシステムの特性
情報ネットワークシステム間の情報伝達の特性
異なる意思決定システムの並存
情報交換の広場としての市場の成立
戦国の市場の歴史的評価
全体の情報ネットワークシステム構成図
明と戦国の日本――社会システムと情報ネットワークシステムの比較
社会システム・情報ネットワークと文化の関係
補足リサーチ8 システム理論による情報ネットワークシステムの説明
補足リサーチ9 戦国文化の基層を探る
第9章 もうひとつの選択肢の可能性 分権型社会はありえたのか
上からの変革による天下統一戦略の先進性
本能寺の変の根本原因
信長の軍事組織・軍事情報ネットワークの構造的欠陥
豊臣・徳川政権による社会システム・情報ネットワークの統合再編
もうひとつの選択肢の可能性
信玄勝利後の仮説
分権化の選択肢を阻止した信長の天下統一戦略
自律分散型情報ネットワークシステムの展開と世代間ギャップ
世代間ギャップによる世代間コミュニケーションネットワークの切断
世代間ネットワークの切断をどうすれば修復できるのか
補足リサーチ10 複数国家説と東アジア経済圏の可能性
補足リサーチ11 戦国の忍者たちの悲惨な末路
終章 戦国の情報ネットワークの歴史的位置
情報化の歴史的段階をどう設定すべきか
戦国の情報ネットワークの歴史的位置
文字社会と無文字社会の並存のあり方
戦国の社会・情報ネットワークの先進性
戦国の社会システム・情報ネットワークの終焉
参考文献
あとがき
蒲生 猛(がもう・たけし)
1952年 東京都生まれ。
1975年 早稲田大学理工学部卒業。大手IT企業入社。
以後、営業・企画・マーケティング部門に勤務する。並行して、経済分析研究会のメンバーとなり、情報経済論・情報化社会論を担当し、研究を継続してきた。
2015年 IT専門学校の講師となり、日本・アジア・アフリカの学生たちの教育に、情熱をもって取り組んでいる。
著 書 『第4次情報革命と新しいネット社会』コモンズ、2014年。
共 著 『産業空洞化はどこまで進むか』日本評論社、2003年。
主論文 「80年代情報革命の社会的意味」『経済評論』1982年3月号、「情報化の進展とコンピュータ産業」『産業年報1997年版』、「情報革命がもたらす新しい社会」『現代の理論』2011年秋号など。