四六判/244ページ/本体1800円+税
2017年4月/ISBN 978-4-86187-140-5
格差が拡大するなかで、GNPの増大に代わる、コミュニティとエコロジーを重視した
新しい社会と経済の指針を示す実践と思想の書。
(共生主義宣言=世界各国で3000余名が署名。各地での実践をふまえ、豊かさとは何かを示して、大きな反響を呼んでいる。)
第1章 共生主義とは何か? 西川 潤
1 共生の意味と本書の構成
2 「共生主義宣言」の背景
3 「共生主義宣言」の内容
4 世界を文化的・倫理的視点から読み解く
5 「共生主義宣言」の意義
――社会科学における倫理性の再建を通じた近現代的世界観の転回
第2章 共生主義宣言――相互依存宣言 アンベール―雨宮裕子 訳
はじめに
1 最大の挑戦
2 四つ(加えてもう一つ)の基本的問題
3 共生主義について
4 倫理と政治と環境と経済に関する考察
5 具体策とは?
第3章 共生主義の経済 マルク・アンベール
1 社会をより人間的にする
2 経済と科学技術が支配する社会からの脱却
3 もうひとつの基盤による暮らしの再構築
4 あらゆる活動の商品化に歯止めをかける
5 組織の大きさの制限
結びに代えて
第4章 共生社会への壁をどう克服するか? 西川 潤
1 津久井やまゆり園での障がい者殺人と格差の時代
2 内なる偏見がもたらす社会的損失と相模原事件の教訓
3 ポスト経済成長期を拓く二つの地域ケア
第5章 現代世界における「農の営み」の根拠 勝俣 誠
1 日本型危機の克服と「農の営み」
2 私たちは回しているのか、回されているのか
3 「豊かさ」の現代史
4 断絶とつながりの回復
5 「農の営み」から現代世界を読み直す
6 モノの消費よりも自律を
第6章 ひろこのパニエ――フランスで取り組んだ共生の産消提携 アンベール―雨宮裕子
1 実践研究からの学び
2 新鮮で安全な地元の野菜を求めて
3 孤立から連帯へ
4 「ひろこのパニエ」の発足と広がり
5 「ひろこのパニエ」から共生社会へ
6 対話から
〈コラム〉 世界に広がる生産者と消費者の地産地消 アンベール―雨宮裕子
第7章 地域に息づく共生運動
1 菜の花プロジェクトが描き出す循環型社会 藤井絢子
2 都市と農村を結ぶ持続可能なコミュニティをどう創るか? 吉川成美
3 野馬土が目指す内発的復興 西川 潤
あとがき 西川 潤
西川潤(にしかわ・じゅん)
1936年生まれ。早稲田大学名誉教授。
主著『人間のための経済学――開発と貧困を考える』(岩波書店、2000年)、『グローバル化を超えて――脱成長期 日本の選択』(日本経済新聞出版社、2011年)、『新・世界経済入門』(岩波新書、2014年)、共編著『連帯経済――グローバリゼーションへの対案』(明石書店、2007年)、『開発を問い直す――転換する世界と日本の国際協力』(日本評論社、2011年)など。2018年10月逝去。
マルク・アンベール(Marc Humbert)
1947年生まれ。レンヌ第1大学政治経済学教授。
主著“Vers une civilisation de convivialite : travailler ensemble pour la vie en prenant soin l’un de l’autre et de la nature”(『共生の文明へ――自然を破壊せず、人がいたわり合って生きるには), Editions Goater, Rennes,2014.共著“Social Exclusion‐Perspectives from France and Japan”(『社会的排除の日仏比較考察』), TransPacificPress, Melbourne,2011.共編著『脱成長の道――分かち合いの社会を創る』(コモンズ、2011年)。
勝俣誠(かつまた・まこと)
1946年生まれ。半農半読。主著『アフリカは本当に貧しいのか――西アフリカで考えたこと』(朝日選書、1993年)、『新・現代アフリカ入門――人々が変える大陸』(岩波新書、2013年)、『娘と話す世界の貧困と格差ってなに?』(現代企画室、2016年)。
アンベール―雨宮裕子(Humbert‐あめみや・ひろこ)
1951年生まれ。レンヌ第2大学日本文化研究所長。
編著“Du Teikei aux AMAP‐le renouveau de la vente directe de produits fermiers locaux”(『提携からアマップヘ――再生する地産地消』),レンヌ大学出版局,2011.主論文「福島の被災農家たち」『震災とヒューマニズム――三・一一後の破局をめぐって』明石書店、2013年、“La longue marche de l’agriculture familiale au Japon”(「日本の家族農業の変遷」),Revue Tiers Monde, Armand Colin, 2015.
藤井絢子(ふじい・あやこ)
1946年生まれ。NPO法人菜の花プロジェクトネットワーク代表。
編著『菜の花エコ革命』(創森社、2004年)、『菜の花エコ事典』(創森社、2011年)、『チェルノブイリの菜の花畑から』(創森社、2011年)。
吉川成美(よしかわ・なるみ)
1969年生まれ。県立広島大学大学院経営管理研究科准教授、URGENCI(国際CSAネットワーク)理事。
共著『中国の森林再生――社会主義と市場主義を超えて』(御茶の水書房、2009年)、『高畠学』(藤原書店、2011年)。主論文「野の復権【社会主義と市場主義を超えて】」『環』Vol.40、2010年。
書評オープン 『ガバナンス』(2017年5月号) 「日本農業新聞」(17年6月4日)、「ふぇみん」(17年7月5日)、「出版ニュース」(17年6月下旬号)、「公明」(17年7月号)、「公明新聞」(17年5月15日)、「ガバナンス」(17年5月号)、メールマガジン『電子耕』(No.400 2017.5.16)で紹介されました、「生活経済政策」(2017年7月No. 246)などで紹介されました。
共生主義」は、ポスト資本主義社会を拓くために打ち出された実践理論だ。本書の第2章に収録された『共生主義宣言――相互依存宣言』は、13年にフランスで出版され反響を呼んだ。世界中で3600余人が署名し、簡訳版は10か国語に翻訳された。
そこでは、互いの相違や異論をみとめつつ、他者とつながり、人類の豊かさをモノの増産に求めず、自然を大切にし、市場経済に依存せずに暮らす、新しい文明が提起されている。最近、日本で広がっている田園回帰の流れとも呼応する発想だ。宣言の背景から地域に息づく共生運動まで、本書を通じて、私たちがどのように暮らすことが幸せなのか、本当に豊かな生き方とは何かも示唆してくれる。