中野佳裕
A5判/152ページ/本体1400円+税
2017年12月/ISBN 978-4-86187-142-9
「大きな家(=殻)を欲しがったちびカタツムリはその願いを実現しました。
でも、まわりにエサがなくなったとき、殻が重すぎて仲間たちのように動けず、
やがて餓死してしまったのです。
過剰な成長を求める人間は大丈夫でしょうか?」
ホンモノの豊かさを構想するための「思考の物差し」の提供を目指す作品。
現代思想の最先端を取り込みつつ、わかりやすく論じる。
大学や市民勉強会のテキストに最適。
プロローグ 世界をケアするために
第1章 カタツムリの知恵と脱成長
第2章 〈貧しさ〉を問い直す マジード・ラーネマの思想を訪ねて
第3章 精神の地域主義 セルジュ・ラトゥーシュの思想との出会い
第4章 生まれてくる生命を支える社会を創る
エピローグ そしてスイミーになる And Becoming Swimmy
中野佳裕(なかの よしひろ)
研究者。PhD。専門は社会哲学。社会発展の思想と倫理を問いなおす研究を行っている。2011年4月から2018年3月まで国際基督教大学社会科学研究所(ICU SSRI)の助手・研究員として勤務。明治学院大学国際平和研究所(PRIME)研究員、上智大学グローバルコンサーン研究所(IGC)客員所員も兼任。2018年4月より早稲田大学地域・地域間研究機構(ORIS)次席研究員/研究院講師。
◆共編著に『21世紀の豊かさ──経済を変え、真の民主主義を創るために』(コモンズ、2016年)、共著に『21世紀の左派――北と南の対話へ向けて』(ジャン=ルイ・ラヴィル、ホセ・ルイス・コラッジオ編、スペイン語、2014年/フランス語、2016年)、『脱成長の道──分かち合いの社会を創る』(勝俣誠、マルク・アンベール編著、コモンズ、2011年)など。訳書にセルジュ・ラトゥーシュ著『〈脱成長〉は、世界を変えられるか?――贈与・幸福・自律の新たな社会へ』(作品社、2013年)、ジャン=ルイ・ラヴィル編『連帯経済――その国際的射程』(北島健一・鈴木岳との共訳、生活書院、2012年)セルジュ・ラトゥーシュ著『経済成長なき社会発展は可能か?――〈脱成長〉と〈ポスト開発〉の経済学』(作品社、2010年)など。詳細はウェブ研究室まで。
世界一大きなうち=殻を得た「ちびカタツムリ」が崩壊してしまう物語を入り 口に、消費社会のグローバル化に伴う現代世界の危機に迫った。「貧しさ」の意 味を問い直したイランの思想家ラーネマらの研究を読み解く。社会哲学者である 著者の経験も踏まえた、脱成長論への親しみやすい道案内だ。
『毎日新聞』(夕刊、2017年12月26日)
豊かさを経済的視点から捉える考えは、産業革命期の欧州で生まれました。それまで豊かさには人々の幸福感や健康も含まれていましたが、資本主義の発展に従い、専ら所得の増加を意味するようになりました。(中略)産業革命以前は世界の多くの地域で森と海の資源を過剰に消費しない循環型で節度ある生活を維持してきました。コミュニティーの隣人と食べものや生活用具を分かち合う経済も日常的に存在していました。21世紀になり、そうした環境に優しい分かち合いの生活が先進国の若者に見直されています。特に東日本大震災の後、都市から農村に移住し、新規就農やスローライフを実践する動きがこの世代から生まれています。コミュニティ―を大切にする若い人々の柔軟な生き方に希望があると考えています。スローフード運動発祥の地のイタリアには個性を活かす地域づくりを進める自治体もあります。仕組みは、地方から変えていけるのではないでしょうか。
『中国新聞』(2018年7月4日)
「月刊ガバナンス」(2018年2月号)、『参加システム』(2019年9月号)、『文化連情報』(20年8月号)などで紹介されました。