ソウルの市民民主主義——日本の政治を変えるために[3刷]

白石孝編、朴元淳・白石孝ほか著
A5判/204ページ/本体1500円+税/3刷
2018年3月/
ISBN 978-4861871467

韓国ソウル市では、市民運動出身の朴元淳市長のリーダーシップと市民の参画で、
自治体改革が進んでいる。貧困を解消するために働きがいのある仕事を創り出し、
非正規効用をなくし、職員がまちへ出かけて弱い立場の市民のニーズを探る。
日本にとって大いに参考となる政策を初めて詳しく紹介し、
どうすれば日本でも可能になるかを考察。
地方自治、民主主義、韓国社会に関心がある人たちの必読書。

 

目次

第1章 ソウル市の市民民主主義革命 白石孝
第2章 キャンドル市民革命が変えたことと、これから変えるべきこと 朴元淳(解説:白石孝)
第3章 まちを市民のものにする――人間中心の交通と出かける福祉 白石孝
第4章 市民の人権を守るソウル市の労働政策 上林陽治
第5章 貧困解消へのチャレンジ――住宅福祉と雇用づくり 白石孝
第6章 私の政治哲学――革新と協同統治 朴元淳
第7章 韓国の社会運動に学ぶ 白石孝
第8章  リベラルにソーシャルの視点を――貧困と格差を是正するために 大内裕和・白石孝

 

編著者プロフィール

白石孝(しらいし・たかし)
日韓市民連帯1000人アピール代表、NPO 法人官製ワーキングプア研究会理事長、荒川区職員労働組合顧問(前書記長)。自治のあり方、国民総背番号制、多文化共生など幅広く活動。
共著に『マイナンバー制度——番号管理から住民を守る』( 自治体研究社、2015年)、『なくそう!官製ワーキングプア』(日本評論社、2010年)など。

 

書評

 

書評オープン

(前略)本書では、まずはじめに、どのような選挙システム、政策策定が行なわれているか、そして制作を確実に実現させていくマニフェスト運動が紹介されています。そして第二小で大統領選直前の2017年4月20日の朴元淳ソウル市長の講演を引用し、朴市長の「市民が主役であり、その市民の力を引き出しさせるのが『中央』『地方』政府だという深い思い」を紹介しています。これはこの本のタイトルにもなった市民民主主義です。ソウル市ではその市民民主主義により、5代市政目標(①堂々と享受する福祉②ともに良く暮らす経済③ともに創造する文化④安全で持続可能な都市⑤市民が主体となる市政)に基づき、社会保障や教育を重点政策にし、非正規労働者を正規職に転換し、労働時間短縮に伴い正規職を採用するという自治体改革を具体的数値目標と政策で進めています。(中略)さらに、対談で内容を深め、日本でどういかすかを語りあっています。どれもワクワクする内容で、今後の私たちの運動にも参考になるものだと思います。

『季刊自治と分権』(2018年4月号)


白石さんは現役の頃から労働運動に取り組み、韓国との交流も行ってきた。退職した今も、韓国調査を続けている。「日本とは文化や歴史背景が異なる欧米と違い、ソウル市は同じ東アジアで共通することも多く、基本的な行政制度も似ているので比較しやすい」と白石さんは言う。日韓で同時進行的に起きている問題もあり「韓国のことは関係ないと思わないで、自分たちに引き寄せて考えて欲しい」と話す。

『多摩地域のタウン紙 アサココ』(2018年4月5日号)


本書は、2016年~17年のキャンドル集会に前後して進む改革の動きを「市民民主主義」の切り口で探り、なぜ革新系の朴元淳(パク・ウォンスン)市長が誕生し、どのように市民参加の行政・政治が行われているかを明らかにしている。ソウル市では、いち早く非正規の公務労働者6千人を正規化し、「出かける福祉」をはじめとする低所得層大作、青年の秋桜支援などで成果を上げている。朴市長は、一般市民を対象にした労働政策も推進。1千万市民のうち700万人はおうどうしゃだとし「労働問題に責任を持つのは市の責任」と言い切る。民間企業も視野に入れた公契約条例の拡大や、長時間労働の是正に挑戦中だ。(中略)編著者の白石孝さんは長年、労働運動や社会運動に関わる中で中長期戦略に乏しい日本の運動の限界を痛感してきたという。「日本の社会運動の参考になる形でソウル市の実践を紹介したい」と、何度も訪韓し、取材・対話を重ねて出版にこぎ着けた。日本の運動が学ぶところは多いのではないか。

『連合通信・隔日版』(No.9303 2018年4月14日号)


ソウル市では、社会運動家の朴元淳市長が11年10月に就任以来、市民参画を進めながら、社会民主主義的な政策を実行してきた。本書は朴市長へのインタビューなども交えながら、ソウル市の政策を紐解き、いま韓国で起きている大きな社会変化を紹介するものだ。(中略)その重点政策が、マニフェストで3大公約とした(1)小中学校給食の完全無償化、(2)私立大学の授業料半減、(3)公共部門の非正規労働者の正規職化。特に力を注ぐのが労働政策で、数千人規模の非正規公務員の正規職化を実現するとともに、委託業務先の正規職化や公契約条例制度の導入も進めている。

『月刊ガバナンス』(2018年5月号)


「格差を是正する政策を検証」
『ソウルの市民民主主義 日本の政治を変えるために』は、2016年から2017年にかけてのキャンドル市民革命が変えたことは何だったのか、そしてソウル市において実現した市民民主主義とは何なのかを中心に、韓国社会変革の現在的な意義を多角的に考察した韓国・日本の共同研究の記録でもある。ソウル市長の朴元淳も論考を寄せている。ここでは、市民の人権を守る労働政策のあり方や貧困・格差を是正するための具体的な政策の検証を通して、それが日本の現状に照らして、いかなる意味を持つのかを考察している。韓国の試みから学ぶことは多い。

『社会新報第4981号(2018年5月9日号)


国政私物化の前韓国大統領を弾劾・罷免に追い込んだのは広範な市民の運動でした。原動力となった民主主義が市民運動出身の市長のもとでどう発展してきたか―当選以来のソウル市政の歩みを紹介します。編著者は元自治体労働者。非正規公務労働者の正職員化、市立大学の授業料半減、人間中心の交通、「まちに出かける福祉」などソウル市の政策を手掛かりに日本社会は何をすべきか考えます。

『しんぶん赤旗』(2018年6月3日号)


官製ワーキングプア問題等の社会運動に長年取り組んだ編著者が、社会変革の行動モデルを韓国に求めた意欲的な書。朴元淳市長のリーダーシップの下、ソウル市はめざましく改革を進める。2011年に当選するや、公約達成の評価システム(ほぼ100%!)、財政改革(財政評価方法を明確化)、それに公共部門(市職員等)の非正規労働者の正規職化などを進めた。なんと、人件費は削減されたという。 市民も改革の主役だ。市民団体「参与連帯」や、労働団体が各年代に浸透し、社会運動を牽引する。改革を表明すると「財源はどこに?」と否定的な日本と比較してしまう。編著者は50回以上訪韓し、市民団体や現場の人々、朴市長とも話をし、調査も行い、日本との違いを明らかにした。朴市長の文章やソウル市の女性政策、貧困と格差是正に関する日本社会の比較論考も大いに参考になる。社会を変える民主主義のため、希望も見えてくる一冊。

『ふぇみん』(2018年6月25日号)


「日本の政治を変えるために」を前提としながら、ソウル市の施策と市民運動の現状を概観したもの。教科書風の組み立てになっていないのが好ましい。現市長の朴元敦氏も、談話「私の政治学―革新と協働統治」を寄せている。東京都荒川区の元職員の白石氏は、専門家ではないと謙遜しているが、それがかえって問題への接近を具体的で説得的なものにしている。今後、ソウル市が地方行政と市民との距離がどう埋めていくのか、その結果報告が待たれる。

『出版ニュース』(2018年10月上旬号)



『週刊新社会』(2018年6月5日号)で紹介されました。
『出版ニュース』(2018年6月下旬号)で紹介されました。
『I 女のしんぶん』(2018年7月10日号)で紹介されました。
『消費者リポート』(1612号、8月20日号)で紹介されました。
『婦人通信』(715号、2018年10月1日)で紹介されました。
『歴史地理教育』(2018年11月号)で紹介されました。
『アジェンダ』(第65号、2019年夏号)で紹介されました。
『K-PEACE』(2019年8月号)で紹介されました。