四六版/252ページ/本体1700円+税
978-4-86187-159-7/2019年8月
2018年12月に水道法が改正され、民営化が進められようとしている。
一方ヨーロッパ諸国は民営化の誤りに気づき、再公営化がトレンドだ。
PFI法改正を含めて世界と逆行する日本の政策をわかりやすく解説し、
自治体行政の最新の動向を紹介。
いのちを支える水をどうしていけばよいのかを考える。
はじめに
第1章 世界の水道民営化の30年――「人権としての水」を確立してきた国際市民社会の闘い 内田聖子
1 古くて新しい問題
2 途上国に広がった民営化――1990年代の失敗の連鎖
3 民営化の転換と市民社会の攻防――2000年代の変化
4 人権としての水か、新たな民営化か――2010年代の攻防
5 水は自治の基本である
第2章 公共サービスの再公営化が世界のトレンド 岸本聡子
1 民営化は失敗だった●パリ市(フランス)
2 市民参画を求める再公有化運動●バルセロナ市(スペイン)
3 鉛汚染との闘い●ピッツバーグ市(米国)
4 裁判で勝ち取った公営化●ミズ―ラ市(米国)
5 民営化と再公営化のせめぎあい●ジャカルタ市(インドネシア)
第3章 世界と逆行する日本の政策
1 徹底解剖水道法&PFI法 内田聖子
一 水道法の改正で何が起きるのか
二 PFI法の概要と問題点
三 日本の水道民営化の意図
2 水道法改正前後の動きと「みんなの公共水道」への模索 辻谷貴文
第4章 民営化が懸念される自治体
1 結論ありきの「コンセッション導入可能性調査」●浜松市 竹内康人
2 水道民営化に反対する市民たち●浜松市 池谷たか子
3 県民不在の「みやぎ方式」●宮城県 工藤昭彦
第5章 「公共の水」をどう維持し、発展させるか
1 民営化を阻止できた理由●大阪市 武田かおり
一 大阪市の水道事業「カイカク」の変遷
二 STOP!水道民営化――市民側のうごき
三 広域化はうまくいくのか――問題が多い一部事務組合
四 公共サービスのあるべき姿を求めて
2 広域化で経営を改善し、職員は確保●岩手中部水道企業団 菊池明敏
3 公営水道の再構築――公公連携、公民連携、住民参画、流域連携 近藤夏樹
一 水道法の変質
二 地方公営企業から失われていく人材
三 民営化・広域化は人材確保・技術力低下に対応できるのか
エピローグ
水は自治の基本――未来の公共サービスを創るために 橋本淳司
あとがき
内田聖子(うちだ・しょうこ)
1970年生まれ。大分県別府市出身。
NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)共同代表。
出版社勤務などを経て2001年よりPARCに勤務。TPPなどのメガFTAやWTOなどの自由貿易・投資協定のウォッチと調査、提言活動、市民キャンペーンなどを海外の市民社会団体とともに行う。世界各地でこれまで「人権・自治・公共財としての水」を取り戻すための運動が重ねられてきた。「遅れてきた民営化の波」に直面する日本の私たちは、そこから学び、その運動に参加していく必要がある。
共著『TAGの正体――農業も自動車も守れない日米貿易協定』(農山漁村文化協会、2018年)、『自由貿易は私たちを幸せにするのか?』(コモンズ、2017年)『TPP・FTAと公共政策の変質―― 問われる国民主権、地方自治、公共サービス』(自治体研究社、2017年)、『非戦・対話・NGO――国境を越え、世代を受け継ぐ私たちの歩み』(新評論、2017年)、『徹底解剖国家戦略特区―― 私たちの暮らしはどうなる?』(コモンズ、2014年)など。
どうする?日本の水道―自治・人権・公共財としての水を
DVD/本編38分(予定)/制作:アジア太平洋資料センター(PARC)
本体価格:4,500円+税(図書館価格:本体15,000円+税)
98%の普及率と、世界有数の「飲める水道水」を誇る日本の水道。しかし、日本の水道は、人口減による自治体の財政難、インフラの老朽化、職員の高齢化・減少など多くの課題を抱えています。その解決策として、政府は水道事業の運営権を民間企業に売却するコンセッション方式を推奨しています。2018年12月の水道法改正にもこれを促進する内容が含まれています。民営化の失敗事例が明らかになり、再公営化へと向かう海外の動きと逆行する日本。「自治」をキーワードに水道の未来を考えます。
※アジア太平洋資料センター(PARC)のウェブサイトに飛びます
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