寄本勝美・小原隆治編
四六判/380ページ/本体3200円+税
2011年2月/ISBN 978-4861870774
新しい公共をどう創り出すのか?それは社会を本当に変えるのか?
研究者とジャーナリストがさまざまな現場の試みをとおして、地域主権を定着させ、暮らしやすい地域にするための制度・政策・市民活動を提起する。
序 論 新しい公共と自治をめぐる論点 小原 隆治
第Ⅰ部 地域社会の危機と再生
1 「ワーキングプア」から「無縁社会」へ
――見えてきたこの国のかたち 鎌田 靖
2 「反貧困」――新たな市民活動のうねり 清川 卓史
3 絶縁社会と「子縁」の可能性 瀧井 宏臣
4 地域再生と農の力 大江 正章
5 地方という物語――地域は社会がつくる 田村 元彦
6 沖縄――自治の挑戦 佐藤 学
第Ⅱ部 自治の現場、自治体の現場
1 公共を担う官民パートナーシップ 寄本 勝美
2 災害ボランティアから見る新しい公共のかたち 山本 耕平
3 ホームレスの自立を支える自治体と市民の連携
――排除型社会から包摂型社会へ 麦倉 哲
4 低炭素社会の実現と市民参加 増原 直樹
5 「漂着ごみ」に見る古くて新しい公共の問題 鄭 智允
6 公民協働に支えられた予防的健康福祉サービス
――フィンランドの事例から 萩野 寛雄
7 地方分権改革後の自治体職員像
――自治体コーディネーターの提唱 早川 淳
第Ⅲ部 問われる自治の仕組み
1 「裁判員型」市民参加を通じた自治体政策の形成
――和光市の大規模事業検証会議を事例として 長野 基
2 転換期における自治体総合計画の課題と展望
――三鷹市第四次基本計画の策定から 一條 義治
3 小規模自治体における職員と住民の協働
――那須烏山市の総合計画をめぐって 中村 祐司
4 二元代表制における政治的意思決定への住民参加 岡本 三彦
5 韓国の地方自治における住民参加の仕組みと課題 李 憲模
6 市町村総合行政主体論と「平成の大合併」
――市町村自己完結主義の批判と「総合性」の擁護 市川 喜崇
あとがき 小原 隆治
寄本勝美(よりもと・かつみ)
1940年、和歌山県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学、博士(法学・京都大学)。早稲田大学政治経済学術院教授。〈主著〉『ごみとリサイクル』(岩波新書、1990年)、『政策の形成と市民――容器包装リサイクル法の制定過程』(有斐閣、1998年)。2011年3月逝去。
小原隆治(こはら・たかはる)
1959年、長野県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。早稲田大学政治経済学術院教授。〈主著〉『これでいいのか平成の大合併』(編著、コモンズ、2003年)、『平成大合併と広域連合』(共編、公人社、2007年)。
鎌田靖(かまだ・やすし)
1957年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。NHK解説主幹。〈主著〉『週刊こどもニュースの2代目お父さんが教えるニュースのことば』(角川学芸出版、2010年)、『ワーキングプア――日本を蝕む病』(共著、ポプラ社、2007年)。
清川卓史(きよかわ・たかし)
1969年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。朝日新聞大阪本社生活文化グループ記者。〈主著〉『ロストジェネレーション――さまよう2000万人』(共著、朝日新聞社、2007年)、『分裂にっぽん――中流層はどこへ』(共著、朝日新聞社、2007年)。
瀧井宏臣(たきい・ひろおみ)
1958年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。ルポライター。〈主著〉『こどもたちのライフハザード』(岩波書店、2004年)、『農のある人生――ベランダ農園から定年帰農まで』(中公新書、2007年)。
大江正章(おおえ・ただあき)
1957年、神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。コモンズ代表・ジャーナリスト。〈主著〉『農業という仕事――食と環境を守る』(岩波ジュニア新書、2001年)、『地域の力――食・農・まちづくり』(岩波新書、2008年)。
田村元彦(たむら・もとひこ)
1969年、和歌山県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。西南学院大学法学部准教授、KBCシネマ1・2企画ディレクター。〈主著〉「行為と弁明――プライバシーと公共性(1)~(3)」(『西南学院大学法学論集』第35巻1・2号、第36巻1・2号、第36巻3・4号、2002~2004年)、「〈分断社会〉日本?――日本における少年犯罪に関する政治的・社会的分析」(『慶星法學』第17輯第1号、2008年)。
佐藤学(さとう・まなぶ)
1958年、東京都生まれ。ピッツバーグ大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学、博士(政治学・中央大学)。沖縄国際大学法学部教授。〈主著〉『米国議会の対日立法活動――1980~90年代対日政策の検証』(コモンズ、2004年)、『沖縄論――平和・環境・自治の島へ』(共著、岩波書店、2010年)。
他
書評オープン 『ガバナンス』(2011年3月号) ガバナンス』(11年3月号)、『出版ニュース』(11年3月中旬号)、『町村週報』(11年3月28日)、『ふぇみん』(11年4月15日、NO.2953)、『月刊自治研』(11年5月号、NO.620)で紹介されました。
本書は10年前に発刊された『公共を支える民』の第2弾にあたるとともに、寄本氏の大学退職を記念したもの。大学・大学院時代に寄本ゼミに所属し、氏の薫陶を受けた研究者やジャーナリスト、自治体職員たちが、地域社会の危機と再生、自治・自治体の現場、自治の仕組みを「こだわり」を持って論じる。
寄本氏自身は「公共を担う官民パートナーシップ」と題した小論を寄せる。書き出しは「官が『公共』を支配し、官の都合のよいように民を利用する時代は,終わった。」。公務員は「公務員市民」であることが望まれ、市民性にあふれた公務員は、市民と脈の通い合った、頼もしい公務の担い手となるはずだ、とエールを送る。